しかし、情報資産をどう活用していくかという、ERPが最も真価を発揮すべき部分で評価が低い。付属のBIツールを使ってシステムを作っても、経営戦略の変化に対応できずに内容が陳腐化し、ERP内には情報が不足している、といった批判によるものだ。
その根本原因は2つあるという木戸氏。「ひとつはBIの役割に対する誤認識。もうひとつは、ERPとBIの役割分担に対する誤認識だ」
BIは、一部の人々のためのロジックツールではなく、すべてのユーザーが普段見るべき情報を見やすい形で提供するのがBIの役割である。また、BIは導入が難しく、定義も操作も難しいともいわれている。
「その原因は、欧米のBIツールにあるといっても過言ではないだろう。それを踏まえ、われわれは誤解を解くようなソフトウェアを開発/販売したいと思っている」(木戸氏)
また、ERPの設計段階で要件が出てきたら、「ERPで何をすべきか」「BIで何をすべきか」、しっかり切り分けていかなければならないと、木戸氏は強調する。
たとえば、経営状況という要件はすぐに変わってしまうため、ERPに作り込むべきではない。そのため、制度会計的なものはERPで実現し、管理会計的なものはBIで実現すべきものとなる。
また、制度会計は法制度や業務に依存し、管理会計は経営や環境に依存している。前者は厳格性、共通性が高く、あまり変わることはない。しかし後者は個々の要素がバラバラでどんどん変化していく。したがって、ERPは骨格となる業務フローに特化して整備し、BIでは柔軟性を最大限に生かしてマネジメントフローをカバーしていくという切り分けにすべきなのだ。
日本発のDr.Sumは日本のERPの価値を高める
次に木戸氏は、菓子製造会社におけるケーススタディとデモンストレーションに話題を移した。この会社では、次の2つの問題点抱えていた。
- 店舗、営業所、営業本部、経営者という情報の流れに時間がかかりすぎていた
- 店舗ごとに情報が分断され、全体の情報が見えなくなっていた
これらの問題に対し、店舗からNew RRRに直接情報を入力し、Dr.Sumと連携させることで解決していったという。「ポイントは、ERP側とBI側のロジックを使い分けていること。ERP側は正確なロジックが必要な原価計算、BI側はスピーディでタイムリーな経営判断を行う」(木戸氏)
また、すべての人が情報を閲覧でき、誰もが同じ基準で情報を得られるように工夫した。「それにより、情報を日次、月次、年次で比較しながら閲覧でき、またドリルダウンという形で情報を掘り下げることもできた。自店舗と全店舗との比較や、優良店と成績上位店の比較も可能になった」と木戸氏。
最後に木戸氏は、Dr.SumがERPに与えている価値について、「非ERPの情報も統合した、より高度なデータ活用が可能になる。また3秒、3クリックで情報を掘り下げ、詳細な情報に到達できる」などを挙げ、日本のERPの価値を高めるツールであることを強調した。