北東アジアOSS推進フォーラムで行われた報告より、China Standard Software(CS2C)のYuqing Lan氏の報告について紹介する。
Lan氏が勤めるCS2Cは、OSSの開発と販売を中国で展開するソフトウェアメーカーだ。2004年10月にISO9001認証を取得したのをはじめ、同年12月にはCMMI3を取得。現在ではCMMI4と5の評定を得るべく活動しているという。また、CS2Cの主な顧客は政府で、「特に上海市政府からは最大の受注を受けている」とLan氏。
![Lan氏](/story_media/20343410/CNETJ/070219oss180x247.jpg)
そのCS2Cの主力ソフトとなるのが、「NEOShine Linex」だ。CS2Cでは、このNEOShine LinuxをPCにカスタマイズしてインストールし販売をすることで、大きな利益を上げている。Intelや海爾(ハイアール)といったメーカーと協力し、商品取引関係のソフトウェアシステムや、ホテルで使用されるPCソフトウェア、低コストのPC Linuxシステムなど、個々の市場にあったカスタマイズが施されているのだ。
特に力を入れているのが、中国で最も人口が多い農家向けのPCシステムで、これは「Happy Family」という商品名で展開されている。このHappy Familyは、「農業技術」、「教育」、「マルチメディア」、「医療・健康」という4つのモジュールから構成されており、シンプルな操作性と高い信頼性から中国国内で高い評価を得ているという。
このように柔軟にカスタマイズできるOSSの特徴を生かし、「CS2CではNEOShine Linuxを使用して顧客のニーズにあった様々なソフトウェアを今後も提供していく」とLan氏は話す。
次にLan氏は、中国国内でのOSSの利用状況について説明を行った。
中国国内では、金融、証券、電子政府、医療、製造といった各業界ですでにOSSが活用されており、「ソリューションとしては成功している」とLan氏。一例としてLan氏は、中国建設銀行のフロント業務システムや、上海証券取引所の株式取引システムがOSSで運用されているほか、上海のYisheng病院での電子カルテや広州での海運港運システムでの活用など、多くの実績をあげた。
中国建設銀行のフロント業務は、これまでUNIXを用いたシステムで運用されていたが、これがNEOShine Linuxに切り替えられた。移行に伴い、ハードウェアやソフトウェアの移植、さらには能力差を検証したところ、2000近い問題点が発見されたが、すべて解決することができ、現在では安定した運営がされている。この移行に伴うメリットとしてLan氏は、「ライセンス料などのコスト削減はもちろん、カスタマイズされたOSSを利用することでハードウェアを新規で導入する際の選択肢が増え、結果としてハードウェアの導入コストも下げることができた」と説明する。
Lan氏は、OSS普及のために必要な点として、以下3点をあげた。
- OSS産業チェーンの整備
現在、OSSは大変多く応用されており、その活躍の場は多岐にわたっている。今後は、その応用範囲をさらに広げ、産業としてのOSSを整備していかなければならない。そのためには、まずOSSに関する研修や技術の検討、さらにはできる限りよい製品を生みだし、それらを標準化する努力が必要だ。 - 移行の円滑化
従来のシステムからOSSへ切り替える際、いかに円滑に移行できるかがOSS普及の鍵となる。設定にあたって、より確かな運用が求められる。 - カスタマイズソリューションの推進
顧客の要望に対してカスタマイズされたソリューションの推進と普及のために、テスティング認証が必要になる。これを活用し、効率よくOSSを開発できるエコシステムを構築することが望ましい(CS2Cでは、現在Novellと提携してテスティング認証のブランドを立ち上げ、活動を行っている)。
最後にLan氏は、OSSはソフトウェア産業のモデルを変える力があると言い、その力を発揮するためには、OSSにかかわる多くの企業が提携や協力を行い、OSSのもつ自由度の高さを生かすと共に、標準化された使いやすい環境を整備する必要があると語った。