Oracle OpenWorld Asia Pacific 2007の本格的な開幕となる31日、Oracle社長のCharles Phillips氏が登壇し、「Oracleのビジネスにはデータベース、ミドルウェア、アプリケーションの3つの柱がある。データベースに蓄えられる情報は意志決定の源泉であり、このビジネスはいまだに重要。今年で30周年となるOracleは、Oracle Databaseとともに不断の成長を遂げてきた」と述べた。
Oracleは11日にOracle Databaseの次世代版「11g」を発表している。11gには既報の通り、400を超える様々な新機能がある。Charles Phillips氏は「IBMやMicrosoftにはない数々の機能を備えている」と、Oracle Databaseがナンバー1であることを強調する。また、データベースからミドルウェア、アプリケーションに至るまで「Complete and Openを実現できるのはOracleだけ」と、これまで通り、カバレッジの広さを強調した。
続いて登壇したエグゼクティブバイスプレジデント、 Oracle Server TechnologyのChuck Rozwat氏は、数ある新機能の中でも特にILMに則ったデータアーカイブ機能とアプリケーションテスティングの機能の紹介に時間を割いた。
同氏は、頻繁に読み書きする必要のあるデータは5%というデータを引き合いに出し、補完しておく必要はあるもののあまり使われないデータや更新されないデータは、低速なストレージや読み取り専用ストレージに移してしまえばストレージのコストを大幅に下げることができる、と11gの新機能を紹介する。
同氏の紹介を受けて登壇したYahoo! Director of Engineering OperationsのMason Ngは、Yahoo!のように膨大なデータを持つ企業にとって「11gのデータ圧縮やパーティショニングの機能は増え続けるデータを安価に蓄積するのに有用」と新機能を賞賛した。
また、11gのアプリケーションテスティングは、実稼働システムの利用状況をキャプチャして、テスト環境に実稼働環境と同じ利用状況で同じ負荷をかけることができる。これまで数カ月かかって構築していたテスト環境が2週間以内に構築可能になるという。
「実際の利用状況を反映できるため、バージョンアップのリスクも最小限に。新しいハードウェアやソフトウェアの利点を早期かつ容易に享受できる」(Rozwat氏)。特に、金融やテレコムなど、多数の商品がめまぐるしく入れ替わるような業界では、競合優位性につながる。
こうした多数の新機能がありながらも、同氏は「11gはグリッドを次の世代にもっていくもの」と、10gと同じく、11gのキーメッセージをグリッドに据える。
11gでは、Oracle Databaseのグリッドを実現するReal Applications Cluster(RAC)のパフォーマンスが向上したほか、管理性など多岐にわたるグリッドが強化も行われている。具体的には、グリッドを構成する全ノードを同時にパフォーマンスチューニングする機能などが実現されてる。また、自動的な点検の機能があるシステムで起こった障害を特定し、その動きをキャプチャ、自動的に修正する機能など、グリッドによって増加したインスタンスの管理を助ける機能も提供される。
Chuck Rozwat氏は、同日、設けられたメディア向けのカンファレンスにおいてはOracle Databaseの11gより先の将来にも触れた。同氏が挙げていた強化点の中でも興味深かったのが「インデックスの作成、バックアップ、パッチの適用、バージョンアップといったあらゆる機能でオンライン操作が利用できるようにしていきたい」というもの。停止しないシステムの実現を安価に行おうという考え方だ。
また、「Oracleとしてはあくまでリレーショナルモデルのデータベースに投資する」ともし、XML専用データベースやオブジェクト指向データベースといったものへの投資は現状予定していないとも語った。ほかに同氏が興味のある分野として挙げられたのが「Semantic Data Model」--Web 2.0でも注目されている、ユーザーのアクションによって最適なデータを提供しようというコンセプトだ。