日本独特の企業文化である“帳票”を中核に、さまざまなベンダーのアプリケーションに共通プラットフォームを提供する。ウイングアーク テクノロジーズが「Made in Japan Software(MIJS)」コンソーシアムに参画する最大の理由がここにある。
「帳票には事業を遂行する上での貴重な情報やノウハウが凝縮されている」--こう語る同社の代表取締役社長、内野弘幸氏は、MIJSを主導してきた1人だ。
帳票が企業活動のハブ
日本の企業には数多くの帳票が存在する。各種の伝票、請求書、作業指示書、担当者別売上一覧など、業務帳票、管理帳票は膨大な数に上る。こうした帳票によって業務が進行するとともに、これらの帳票には企業の重要な情報が盛り込まれている。
ウイングアークはこうした帳票をいかに設計するか、そしてその帳票からいかに的確に情報を収集するかということを主眼に設立された企業だ。現在、同社の事業は帳票系とビジネスインテリジェンス(BI)系という2つに分類できる。内野弘幸社長はこう話す。
「これまでは、アプリケーションの中に帳票の機能が入り、密結合のような形で運用されていました。われわれはこうした帳票の機能をアプリケーションから切り離し、単独の機能として見た方がいいのではないかと考えています。その考えに基づき発表したのが“帳票SOA”というコンセプトです」
その考えが浸透し始めてきて、最近では多くの企業が帳票をひとつの基盤として捉えるようになってきた。そこで同社は、企業の基盤としての帳票を「帳票HUB」と位置づけ、これを前面に押し出している。帳票が企業活動のハブ(中心)となり、そこを拠点にさまざまな企業活動が展開されるという形だ。
そしてもうひとつ、業務プロセスや組織の変化に合わせて柔軟な画面変更ができる「StraForm-X」に関する事業がある。これは帳票をベースにした入力のフォームで、それを出力のSVF(Super Visual Formade)と連携させるという、同社の製品を複合させた新たなソリューションの導入も始まっている。
全社員が使えるBIツール
同社の事業のもうひとつの柱がBIだ。製品としてはデータ活用ツールの「Dr.Sum EA」がある。同社は特にBIを前面に掲げてアピールしたわけではないが、調査会社が製品カテゴリーを決める過程でBIツールに位置づけられた。田中潤製品企画部長がこういう。
「いわばBIを身近なツールとして敷居を下げた製品です。そもそも誰でも使えるツールからスタートした製品で、他のBIツールとはコンセプトが違っていました。しかし、最終的な結果だけを見ると他のBIツールと同じように見えるためにBIツールとして位置づけられています」
また内野社長もこう話す。「日本はトップダウンよりボトムアップであり、そこがDr.Sum EAとマッチしていると思います。企業の中では、すべての社員が情報をほしがっています。しかし従来のBIツールは一部の専門家しか使いこなせないものでした。Dr.Sum EAは誰もがタイムリーに、ペーパーレスで必要な情報を取り出せるもの。それで、一部の人のBIだったものが、組織の中で発展し、全社で使えるものになっていったのです」
企業人は、大量の情報を絞り込んで集計した、その結果が欲しいのである。そこからいろいろな判断をしていく。つまり、ソフトウェアが勝手に分析し判断してくれるということではなく、人間が最終的に判断するためにソフトウェアが事前の仕事をしてくれるというのが本来の姿だ。
「それが集計というものであり、それがソフトウェアの価値です。われわれはそこにフォーカスしているのです」と内野社長は話している。