欧米と日本のギャップを埋める
こうした取り組みを展開してきたウイングアークは、MIJSにも積極的に参加している。その理由を内野社長はこう説明する。
「海外のERPは世界中の最大公約数という意味で、正論としてできあがっているものだと思います。しかしそれが日本企業に、そのまま受け入れられるとは思えません。日本は現場が自ら考え、改善し、非常に効率的な企業運営の仕方を生み出してきました。それに対し、欧米の企業モデルはトップダウン方式で全体のリソースを最適に配置してという考えで成り立っています。この違い(ギャップ)を無理やり日本企業に合わせようとしても効果的な利用は望めません」
このギャップを埋めるひとつの要因に帳票があるというのが同社の考えだ。
「日本では、現場の方が自分で情報を見て、自分で考えながらひとつひとつの仕事を正確にこなすということをやってきました。そうした考えを取り込むのがわれわれの仕事だと考えています」と内野氏。
核になるのは、同社の「帳票HUB」というコンセプトである。欧米型のERPからレガシーなアプリケーションまで、すべて抽象化してハブという形で出力する。上位のアプリケーションが進化してもハブの部分は変わらない。これによって帳票が一元管理でき、内部統制にもつながる。
日本人の発想を形に
こうした考えが今回のMIJS設立にもつながっている。アプリケーションの中に帳票やBIといったものを入れ込むのではなく、どのアプリケーションでも必ず機能として必要なものに関しては外に出した方がいいという発想だ。
日本の企業のほとんどは、販売管理はA社製品、会計はB社製品、SFAはC社製品というように、それぞれを組み合わせながら運用している。しかし、みんながみんなうまく組み合わせて使っているというわけではない。販売管理で入力したデータを会計でも同じように入力するというケースが多かった。
マスターも、それぞれ同じようにメンテナンスをしているという非常に不便な状況にあった。顧客の視点から、その統一を図っていかないと、満足度は向上しないというのがMIJSコンソーシアムの考えだ。
「われわれは帳票ベンダーとしてこうした状況を見ていて、ある販売管理の帳票も、会計の帳票もひとつの抽象化したサービスとして切り出した方が運用しやすいと感じていました。またBIにしても、販売管理のデータとSFAのデータは一緒ではありません。SFAのデータは見込みデータであり、販売のデータは実績データです。つまり、この2つを見比べながら分析するということも必要なのです」(田中氏)
これまでは各々のアプリケーションベンダーが帳票やBIの機能を作り込んでいた。それをアプリケーションから出して、統合する基盤がMIJSだ。ウイングアークは、MIJSの技術部会のうち、共通インフラの活動に積極的に取り組んでいる。
「どこのアプリケーションでも必要なところを切り出して共通に使うということです。そして、日本の企業に、本当に日本企業にあったアプリケーションを使ってもらいたいと考えています。そのためには、日本人独特の発想を形にすることです」--それが、ウイングアークがMIJSに期待することであり、内野社長自身の願いでもある。
