オラクルがエンタープライズSaaSで越える壁 - (page 2)

谷川耕一

2007-11-15 08:00

SaaSでもエンタープライズのビジネス領域をターゲットにする

 中小規模でのSaaS型の導入で、むしろオラクル全体としては中小マーケットのシェア拡大につながったのでは、との問いに対し藤本氏は「現状Oracleでは、中小よりも中堅企業をターゲットに営業活動を行っています。たしかにSaaSはミッドマーケットでソリューションを展開する際の1つの強力な武器にはなりますが、OracleがSaaSで目指したいのはやはりエンタープライズ領域のビジネスです」とのこと。エンタープライズの領域でSaaSを普及させてこそ、オラクルのもつアプリケーションの総合力が優位性になると藤本氏。

 この総合力というのは、従来であればOracle E-Business Suiteといった1つのSuiteパッケージ製品の中で、顧客に対しベストプラクティスを提供してきたが、現状のOracleならば最初はSaaS型で小さく始め、次のステップはSaaSと既存システムとの連携、あるいはSaaSとパッケージ製品のハイブリッド型、さらにはSaaSからパッケージへの移行といったように、企業の要求に柔軟に対応し、成長に合わせた変化にも対応できる利用形態のバラエティをもっていることでも、ベストプラクティスを提供できるということだ。これこそが、SaaS専業ベンダーとの違いであり、エンタープライズの領域では大きな優位性になると藤本氏は言う。

 この利用形態でのベストプラクティスは、たしかに優位性ではあるのだが、実際にSaaSのソリューションを販売あるいは提供するパートナーには、まだうまく扱えないのではと指摘すると「確かにそういった懸念はある」とのこと。とくにSIerの場合は、現状はシステムの開発部分が大きなビジネスになっている。大規模な企業にソリューションを提案しても、ベストプラクティスがSaaS型に落ち着いてしまうと、彼らが力を発揮する部分は極めて小さくなってしまう。とはいえ、顧客へのアプローチ段階では、ベストプラクティスがどのような利用形態に落ち着くかはわからないので、総合力あるベンダーでないと対応できない。

 「将来的には、パートナーにもソフトウェアの提供やシステム開発部分ではない、システム全体をどのように活用するかの面においてコンサルティングすることに注力してもらえれば、結果的にはWin-Winの関係になるはずです」(藤本氏)。

 とはいえ、これが可能となるようにSIerが上流コンサルティング的な業務にシフトするには、まだまだ時間がかかることが容易に予測できる。SaaS専業ベンダーならばSaaSだけを売ればいいので、現状でこの苦労はない。そのため、SaaSのビジネスだけをみればライバル企業の台頭は待ったなしの状況ともいえる。パートナーの変化を待たずにSaaSビジネスを加速するには、ある程度専任でSiebel On Demandの営業をおこなう部隊が必要になるだろうと、藤本氏も感じているとのことだ。

改善はSaaSで、革新はパッケージで

 OracleのSaaSのソリューションに優位性があるとはいえ、ターゲットとするエンタープライズ市場で普及することはどうやら簡単にはいかないようだ。とはいえ、SaaSを本格的に展開したことで、パッケージ導入を検討する顧客の傾向も把握できたという。おおざっぱにいえば、SaaSを選択するのは、業務改善を求めている企業であり、効率化によるコスト削減などを目指しているという。そのため、早く導入できるというのが、重要な要素となり、初期導入コストの低さも合わせSaaS型が適合するとのことだ。

 逆にERPのパッケージシステムを導入する企業は、改善よりもむしろ革新を求める傾向が強いという。ビジネスのやり方を変え、たとえば顧客との直接のコミュニケーションに新たに取り組みたいといった変革を求めているという。そのため、時間の考え方もコストの考え方もSaaSを選ぶ企業とは異なり、半年以上の時間スパンで動いているという。

 さらに、SaaS型のメリットとして、運用管理をOrcleが実施しているために、導入した顧客がどのようにシステムを活用しているかが詳細に把握できることが挙げられるとのこと。これによって、契約したユーザー数をフルに活用している顧客ならば、新たなユーザー追加の提案をタイムリーにできるし、逆に利用率が低ければ利用が拡大するようなサポート提案も行えるというのだ。

 このように、SaaSビジネスを展開したことで得られたノウハウをパートナー企業と共有していくのが、OracleがSaaSビジネスを拡大させるための次なるステップとなるのかもしれない。大規模なエンタープライズ領域でビジネスを展開してきたOracleには、SaaS専業ベンダーにはない乗り越えるべき壁が存在しているようだ。

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