ハイパーコネクティビティ時代のバックボーンには、どのような変化があるだろうか。今回は、ノーテルネットワークスでキャリアネットワークを担当する私、河田純一が、キャリア網が抱える課題の解決策と期待されるPBT(Provider Backbone Transport)技術、さらには40Gbpsで1000km超の伝送を実現するDual POL QPSK(Dual Polarization Quadrature Phase Shift Keying)という技術について、ごく簡単に紹介しよう。
企業ネットワークでは徐々に10Gbpsのインターフェース導入が進んできているが、企業ネットワークの足回りが広域イーサにシフトしていくにつれて、キャリア網の帯域も広げる必要がある。ビット単価は低下を続ける一方で、キャリアグレードの品質は依然として要求される。キャリアにとっては、いかに安く大容量化し、なおかつキャリアグレードの通信サービスを提供するかが課題だ。
中でも、古典的なオプティカル伝送も依然として残ったままであるため、その上でいかに低コストで高速通信を実現するかも根本的な課題といえる。また、アプリケーションの観点では、イーサネットでいかに従来のTDM(Time Division Multiplex)と同様の信頼性を保つかが鍵となってくる。
BTがNGNに採用したPBT技術
今日、広域イーサにおけるキャリア網内でのスイッチングには、IEEE 802.1ad PB(Provider Bridges)が採用されるようになった。802.1ad PBは、企業内のVLANで用いる802.1qのフレームにS-VID(Service-VLAN ID)を追加した、サービスタグ付きフレームによってサービスを識別する。ただし、この方式はS-VIDスペースが12ビットしかないため、最大で約4000VLANしか識別できず、拡張性の限界が指摘されていた。
この問題の解決策の1つとして、IEEE 802.1ah PBB(Provider Backbone Bridges)がある。PBBは、PBのフレームをそのままカプセル化して、バックボーンのMACアドレスを追加する方式だ。追加したバックボーンMACアドレスとバックボーンVIDは、従来のイーサフレームとまったく同じものとして扱う。PBBでは、PBで用いたS-VIDに代って、I-SID(Service Instance Identifier)をユーザー/サービスの識別に用いる。I-SIDは拡張されて最大約1600万超のVLANまでを識別できる。
このPBBのフレームフォーマットをベースに、SONET/SDH(Synchronous Optical Network/Synchronous Digital Hierarchy)のようなパス(経路)オリエンテッドな伝送を実現しようとするのが、PBT(Provider backbone Transport、IEEE 802.1ah PBB-TEの名称で標準化の方向)技術である。バックボーンのMAC(キャリア機器のMACアドレス)とバックボーンのVID(キャリア内のVLAN)とを組み合わせて、1つのスタティックなパスをエンドツーエンドで設定することにより、ルーティングする必要がない。SONETのようなイーサフレームではないサービスも、PBTでカプセル化して伝送することもできる。