今となってはMicrosoftが先週、同社の相互運用性原則を大々的に打ち出したもうひとつの理由がわかった。同社の「Office Open XML」文書フォーマットをめぐるオープン性を主張する機会をもう1回望んでいるだけでなく、欧州委員会から独占禁止法違反による巨額の罰金をまたもや課されることを阻止したかったためでもあった。
米国時間2月27日、Microsoftによる欧州委員会サイドでの労力が無駄となったことが明らかになった。欧州委員会はMicrosoftに対し、欧州委員会の2004年の反トラスト法事案で課された条件に従わなかったことを理由に、13億ドルを課す予定であることを発表した。欧州委員会は、今回の新たな罰金(すでにMicrosoftに課された12億ドルに上乗せされる)は、同社が競争業者に対してプロトコルを妥当な価格でのアクセスを提供して、競争業者が互換性を有するソリューションを構築させることを怠ったためであると述べた。
Microsoft関係者は依然として、先週の相互運用性の発表を維持している。 これには他社にプロトコルを無料でアクセスさせることと、特許で保護されたプロトコルに関しては低料金でライセンスを付与するということが含まれていた。この発表は欧州委員会側の行動または行動のヒントには全く影響を及ぼさなかった。Microsoft関係者はいまだに、先週の発表のタイミングは全くの偶然であったと述べている。
Microsoftが2月22日に電子メールの取材を通して筆者に伝えた内容は以下の通りだ。この回答は匿名の広報担当者から得られた。
Q:Microsoftはこの発表をなぜ2月21日にしたのか。Microsoftは新たな相互運用性方策を、ジュネーブにおけるOOXML投票決議会合の1週間前に発表したのは純粋に偶然のことだと言っているか?あるいは、こうした発表が促されたのは、欧州の反トラスト当局サイドで何かが起こったためか。
A:この発表のタイミングは、わが社が顧客、ITベンダー、そしてオープンソースコミュニティが、われわれの技術およびビジネス慣行において、このような広範な変更をできるだけ早期に実施されることを願っていることを認識しているという事実により促された。このような一連の包括的な活動は、6種の高ボリューム製品に適用され、これらの製品のオープン性を向上させ、開発者、提携業者、顧客、そして競争業者の相互運用性、機会、選択肢の拡大を促すであろう。
Q:Microsoftは21日に、特許で保護された知的所有権、API、またプロトコルのライセンスを付与されたい企業に対し「非常に低い料金」で提供したいと述べていた。この新料金は、Microsoftが以前に提供していたものより低くなるのか?どの程度低くなるのか?
A:これは全体的に以前より低くなる。
Q:MicrosoftとSambaは12月に、Sambaのオープンソースのエンジニアがその製品に相互運用性を持たせるために必要となるMicrosoftのAPIやプロトコルにアクセスを認めるための複雑な協定を結んだ。Sambaはこのアクセスのために1万ユーロを支払った(Software Freedom Law Centerが創設した非営利団体を通して)。MicrosoftはSambaとこの協定を再交渉する予定か。また今回の新たな相互運用性協定の結果として、Sambaにいくらかお金を返還するつもりか。
A:PFIF(Protocol Freedom Information Foundation、Software Freedom Law Centerの組織である)と、他のMCPP(Microsoft Communication Protocol Program)およびWSPP (Workgroup Server Protocol Program)のライセンス取得者には、 各々の具体的な状況について話し合い、各自のニーズに対応するために、近い将来、個別に連絡を取る予定である。
Microsoftが先週、何人ものトップ幹部を持ち出した理由を率直に語っているかどうかを(Microsoftは、単に偶然にタイミングが一致したと述べている。本日の欧州委員会の発表ではそうは言っていない)信じるかは別として、欧州委員会がこの新たな罰金を課すことが果たして「妥当」であるかという疑問が残る。欧州委員会の論点は、Microsoftがこれらのプロトコルを公平なやり方で競争業者に対し提供するまでに4年以上も与えられていたというものだ。そして欧州委員会は同社を絶え間なく催促する要もなかったはずだという。Microsoft関係者は、同社は最初のプロトコル一式(MCPPとWSPP)を整理して公開するまでに、この全期間をかけ、「何百万」ドルものコストを費やしたと述べていた。
筆者は欧州委員会のMicrosoftに対する独占禁止法案件については深刻な不安を覚えていた。これは主として、欧州委員会はMicrosoftの行動により顧客が害されたことを一度も証明したことがないという感じを受けるためだ。同委員会はそのかわりに、Microsoftの競争業者が害されたことを証明している。しかしMicrosoftは約束されたプロトコルを提供するという点について、できるかぎり長引かせようとしていたという欧州委員会の見解には筆者も同意せざるを得ないことを認める。さらに泣きっ面に蜂といえるのは、Microsoftが先週の発表を、次の巨額の罰金を回避できるかもしれないと望んでいたためではなく、親切心から先週の発表を行ったようにみせたことだ。
読者はどう考えるか。ここで理不尽なことを言っているのは、どちらだろうか?欧州委員会の競争政策担当委員を務めるNeelie Kroes氏か、それともMicrosoftの最高経営責任者(CEO)のSteve Ballmer氏なのか?
この記事は海外CNET Networks発のニュースをシーネットネットワークスジャパン編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ