小島氏は日本におけるLiveCycle Enterprise Suiteの注力マーケットとして、SAPとのアライアンスを挙げている。「SAPの持っているデータを経営者により分かりやすく見せる」(小島氏)だけでなく、SAP NetWeaverで動作する「SAP Interactive Forms by Adobe」でPDFを使ったデータ入力ソリューションも提供している。加えて、企業システムにおけるRIAテクノロジーの展開と、DRMを中心とする情報セキュリティ対策の3点にリソースを集中させるという。
また、米国ではLiveCycleを直販する部隊も設置されているとのことだが、日本展開ではパートナーとの協業が重要になるとの認識。パートナー向けの技術トレーニングやセミナーの共同開催などで、LiveCycleを取り扱うパートナーと協調して事業を進めたいという。
エンゲージメントギャップを解消するLiveCycle
ウィック氏によれば、LiveCycleが提供する価値は「エンゲージメントギャップの解消」にあるという。
エンゲージメントギャップとは、企業と顧客、企業とパートナーの間で行われるコミュニケーションが途中で放棄されてしまうことだ。
企業内の自動化されたビジネスプロセスを外部でも回そうとした時に、コミュニケーションの中断という問題が発生してしまう。具体的には、保険の見積もりをウェブサイトだけで完結することができず、コールセンターに電話して質問したり、直接店舗を訪問するような事態のことだ。企業側から見れば、コールセンターの人員や店舗での顧客対応で発生するコストも無視できない。そして、最悪の場合、顧客は見積もり書の申請そのものをやめてしまうだろう。
ウィック氏によれば、「LiveCycleこそ、エンゲージメントギャップの橋渡しをして、顧客が(ビジネス)プロセスの自動化をできるようにする」製品であり、いくつかの方法でそれを実現しているのだという。
その第1点が「ユーザー体験」だ。「通常のHTMLで組まれたようなインタフェースと、RIAのインタフェースの違いはなにか?それはパーソナライズだ」とウィック氏。「エンタープライズRIAの強みは、企業がワークフローをユーザーに拡大していく中で、RIAインタフェースがあるからこそ分かりやすいかたちで(作業を)進めていくことができる」点にあるという。
第2点の「広範な普及」は、ユーザーへの圧倒的なリーチが物語っている。ウィック氏はとある調査の結果を引き、「ネットに接続されているコンピュータやデバイスの98%にFlashが導入されている。これらは(潜在的に)RIAクライアントとなる。また、同じように95%にPDFベースの無償のリーダーがインストールされている」と語っている。
Adobeは「これほどの規模でプラットフォームを横断し、ユビキタスなベンダーは他にはない」(ウィック氏)と自信を見せている。