Adobe AIRがLiveCycleに加わることで企業システムはどう変わるか

冨田秀継(編集部) 2008年07月16日 20時14分

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 アドビシステムズは7月16日、エンタープライズ環境におけるRIAの役割を解説する説明会を開催した。企業内の情報を社内外へ「安全に」「豊かな表現で」「素早く展開する」ためのコミュニケーションソフトウェア「LiveCycle」と、各機能を提供するコンポーネントを中心に、Adobe AIRがLiveCycleで果たす役割も含め、日米の担当者が製品戦略を説明した。

ECMを自前で提供するLiveCycle Content Services ES

 アドビが6月18日に発表したAdobe LiveCycle Enterprise Suite Update 1には、新たなコンポーネントとして、LiveCycleとしては初めてECMシステムを提供する「Adobe LiveCycle Content Services ES」と、CADデータをPDFに変換する「Adobe LiveCycle PDF Generator 3D ES」が追加された。

 LiveCycle Content Services ESは、LiveCycleのプロセスの自動化を進めるなかで発生する課題を解決するコンポーネント。その課題とはコンテンツリポジトリで、この機能はこれまで、EMC DocumentumやIBM FileNetなどの他社製品がカバーしていた。

ブライアン・ウィック氏 ブライアン・ウィック氏

 AdobeはLiveCycleの展開において、ECM機能を提供するために他社のECMシステムと連携するコネクタを提供していたが、「顧客から統合環境が欲しいという要望があった」(Adobe SystemsのAdobe Systems プロダクト マーケティング ディレクターのブライアン・ウィック氏)という。

 この要望を受け、Adobeは英国のAlfrescoが手がけるECMソリューションの組み込み版を採用、LiveCycle Content Services ESを用意して、自前でこの機能を提供していくことになった。主な機能には、ドキュメント管理、コンテンツの分類と検索、コンテンツの保存、コラボレーションがある。なお、コネクタは引き続き提供を続ける予定だ。

 一方のLiveCycle PDF Generator 3D ESは、CADデータをPDFに変換するコンポーネント。製造業者などがCADデータをやり取りする際には、受け手も同じCADパッケージを導入していることが前提。この手法には、両者にパッケージが必要というコスト面と、設計データや機密データなどの知的財産が外部に渡るというセキュリティ面の不安があった。

 Adobeはこの分野において、やり取りされるCADデータをPDFに変換し、情報の運用性とセキュリティを高めたい考えだ。

 まず運用という点では、PDFであればAdobe Readerを入手するだけで良い。Windows、Mac、Linuxなどの主要プラットフォームに対応しており、さらにこれは無償で利用できる。セキュリティという点ではサーバベースのセキュリティシステム「LiveCycle Rights Management」によるDRM機能で、ファイル閲覧の制限をさまざまに課すことができる。

 CADデータをPDFに変換しても、「スペックやビュー、効果を生かしたまま、(データを)評価しやすいようにしており、ただ単に3D化したものではない」とウィック氏。どこにでも付けられる3Dコメントを付して、送付者に返信することも可能だ。

PDF変換後の画面。マウスのドラッグで画面中央のモデルがグリグリ動くほか、様々な表示方法を指定できる。「8 sides」は3Dコメントだ。 PDF変換後の画面。マウスのドラッグで画面中央のモデルがグリグリ動くほか、様々な表示方法を指定できる。「8 sides」は3Dコメントだ。

 Adobe LiveCycle Enterprise Suiteそのものは、Update 1となってAdobe AIRとの連携を強化した。また、Adobe Acrobat 9やReader 9、Flex 3フレームワークに対応したほか、DRM保護のファイル形式を拡大し、新たにMicrosoft Officeで提供されるファイル形式と、PTCが提供するCADファイルの形式にも対応した。

エンタープライズ環境のRIA

小島英揮氏 小島英揮氏

 アドビシステムズ マーケティング本部 エンタープライズ&デベロッパー マーケティング部 部長の小島英揮氏は、アドビのエンタープライズプラットフォームにAdobe AIRが加わったことを受け、AIRを軸にLiveCycleを拡張したい考えだ。

 AIRの特徴は、RIAの名の通り、リッチなビジュアライゼーションにある。小島氏も「我々はバックエンドとユーザーの間のインタラクションを提供する」と語っており、バックエンドでどれほど複雑なデータがうごめいていたとしても、きちんと整形してAIRで分かりやすく視覚化できるのだ。

 その最も端的な例は「シャープはAIRで世界を見る」で紹介した「経営コクピット」だろう。SAPの統合アプリケーションプラットフォーム「SAP NetWeaver」を経由してデータを取り込み、AIRで視覚化したシステムだ。

アドビのエンタープライズプラットフォーム アドビのエンタープライズプラットフォーム

ZDNet Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

この記事を読んだ方に

関連キーワード
開発

関連ホワイトペーパー

連載

CIO
シェアリングエコノミーの衝撃
デジタル“失敗学”
コンサルティング現場のカラクリ
Rethink Internet:インターネット再考
インシデントをもたらすヒューマンエラー
トランザクションの今昔物語
エリック松永のデジタルIQ道場
研究現場から見たAI
Fintechの正体
米ZDNet編集長Larryの独り言
大木豊成「仕事で使うアップルのトリセツ」
山本雅史「ハードから読み解くITトレンド放談」
田中克己「展望2020年のIT企業」
松岡功「一言もの申す」
松岡功「今週の明言」
内山悟志「IT部門はどこに向かうのか」
林 雅之「デジタル未来からの手紙」
谷川耕一「エンプラITならこれは知っとけ」
大河原克行「エンプラ徒然」
内製化とユーザー体験の関係
「プロジェクトマネジメント」の解き方
ITは「ひみつ道具」の夢を見る
セキュリティ
エンドポイントセキュリティの4つの「基礎」
企業セキュリティの歩き方
サイバーセキュリティ未来考
ネットワークセキュリティの要諦
セキュリティの論点
スペシャル
エンタープライズAIの隆盛
インシュアテックで変わる保険業界
顧客は勝手に育たない--MAツール導入の心得
「ひとり情シス」の本当のところ
ざっくり解決!SNS担当者お悩み相談室
生産性向上に効くビジネスITツール最前線
ざっくりわかるSNSマーケティング入門
課題解決のためのUI/UX
誰もが開発者になる時代 ~業務システム開発の現場を行く~
「Windows 10」法人導入の手引き
ソフトウェア開発パラダイムの進化
エンタープライズトレンド
10の事情
座談会@ZDNet
Dr.津田のクラウドトップガン対談
Gartner Symposium
IBM World of Watson
de:code
Sapphire Now
VMworld
Microsoft WPC
Microsoft Connect()
HPE Discover
Oracle OpenWorld
Dell Technologies World
AWS re:Invent
AWS Summit
PTC LiveWorx
吉田行男「より賢く活用するためのOSS最新動向」
古賀政純「Dockerがもたらすビジネス変革」
中国ビジネス四方山話
ベトナムでビジネス
日本株展望
企業決算
このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]