NGNはあくまで通信の基幹部分の通信機器を交換したものです。つまり、あくまでエンドユーザから見ればネットワークとしての基本的な機能は変わりません。ここがポイントです。
あまりNGNという言葉に惑わされず、今までと変わらずネットワークとして捉えてください。つまりビジネスへの新たな影響は「無い」と考えてください。もちろん、あなたが通信キャリアにいるなら別ですが。NGNという言葉に惑わされて、新しい機能(むしろ夢や幻想)があるような錯覚が一番恐ろしいのです。
マルチメディアは、どこに?放送の融合はどこに?
はい、ここもNGNを混乱させる部分です。実際、NGNは通信キャリアが発表している定義では、もう少し上位の概念を含んでいます。例えば、サービスの基本となるようなコンテンツの認証や決済なども概念には含まれています。しかし、私があえてそのお話をしなかったのは、NGNの本質はあくまで基幹の通信機器を交換するという事を理解していただきたかったからです。
また、通信キャリア、特にNTTが現在おかれている状況ももうひとつの理由です。総務省は市場の公平性の観点から、通信に関して水平分離を求めています。現在の携帯電話会社が形成しているような、ネットワークから認証・決済・サービスまでが垂直統合されたモデルをよしとしていません。この状況においてはNGNの上位概念を話してもあまり意味がないのです。
前回、通信キャリアはITの世界に乗り遅れており、ICTという言葉でITの仲間に入りたがっているというお話をしました。NGNは本来、通信キャリアにとってITのエリアに入り込む格好の機会になりえます。しかし、それはNGNが上位の概念までを実装できた場合の話です。
この意味で、上に書いた、垂直統合をよしとしない総務省の意向は、NGN本来のコンセプトに逆行する考え方であり、通信キャリアとしてはNGNをICTとして提供したいものの、現実にはネットワークとしてしか提供できない状況なのです。