Notes/Domino 8は停滞から脱する契機となるか
大塚商会、マーケティング本部テクニカルプロモーション部でIBMソフト担当課長を務める丸山義夫氏は、日本におけるNotesビジネスの初期からこの製品に関わり、導入ユーザーの悲喜こもごもを長く間近で見てきた関係者の1人である。
同氏は、「Notes/Dominoの人気は衰えておらず、支持率が(他のグループウェアと)逆転したという印象もない。R5以降もR6、R7を連綿と使い続ける厚いユーザー層が日本にはあり、その優位性は動いていない」と語り、Notes人気低迷の論調を否定する。
丸山氏は自他共に認めるNotesファンとしても知られるが、大塚商会はNotes以外に、マイクロソフトやサイボウズ、さらには自社オリジナルのソリューションも平行して提供する立場にある。それだけに、丸山氏もNotes/Dominoに対しては可能性と問題点の双方について、冷静な視点で分析する。

「ここ数年停滞していた更新が、Notes/Domino 8になってようやく動き出した感じを受ける。企業ポータルの必要性を感じている潜在的なユーザーは多く、これまで静観していたところでも思った以上に積極的に検討されている」と丸山氏は指摘する。しかし、そうした動きは必ずしもポジティブな理由によるものだけではない。これまで使い続けてきた古いバージョンのNotesが、Windowsサーバ、クライアントの更新リミットも重なったことで、運用に限界がきたといった事情もあるだろうとする。
また、全体に「現状のNotesの機能に特に不満があるわけではない」といった傾向が見られるのも、ユーザーの特長という。メーカー側がNotes/Domino 8で提供しようとする最新の機能と、ユーザー側が欲している機能にギャップがあることが、移行を必ずしもポジティブな動機でとらえられない原因のひとつになっているのではないかという。
Notes/Dominoに必要なのは「ブランド戦略」
大塚商会では、Notesマイグレーションについて、さまざまな形式を提案してきた。「Notesからサイボウズ」や「Notesから.NET」そしてもちろん「旧Notesから新Notes」といったパターンもある。
当然のようだが、最も低コストに移行できるのは「NotesからNotesへ」なのだという。ビジネスロジックとデータが一体になっているNotesデータベースを、一般的なRDBとアプリケーションに置き換えるのは、「移行」というよりも「作り直し」に近い作業になる。もちろん、そのための工数もコストも膨れあがる。既存のNotes資産を最大限に生かしたいのであれば、「NotesからNotesへ」の移行が最も合理的だ。
丸山氏によると、R6以降は品質が安定していることも更新を後押ししているという。「R4からR5、さらにR6への更新時には“アプリケーションの改修”自体がSI業者にとってかなりのビジネスになったが、R6以降はそれが激減している。それだけ、バージョン移行に手間がかからなくなっている証拠と言えるだろう」(丸山氏)
ただ実際には、「Notesのバージョンアップ」ではなく「ExchangeやSharePoint」などへの移行を希望するユーザーも少なくない。その要因のひとつとして、丸山氏はマイクロソフトの巧みなプレゼンテーション、イメージ戦略とブランディングを挙げる。WindowsやOfficeがこれだけ普及した環境の中で、マイクロソフトの製品やテクノロジーに対するユーザー側の精神的なハードルは適正値以上に下がっているような印象さえあるという。ITによるコラボレーションの経験値がそれほど高くない企業にも分かりやすく、具体的なイメージが湧くブランド戦略が、今のNotes/Domino、ひいてはIBMに改めて求められている。
それについて丸山氏は、「口コミの影響力をもっと使うべき。顧客のタイプごとにケーススタディとして事例を示し、Notesが可能にしてきた業務の数々を見せることで、知られていない機能の存在をユーザーに気づかせることができる」と提案する。