これからの10年に起こるアーキテクチャの変化
今後10年のうちに起こり得るERPにとっての大きな変化。それは「アーキテクチャの変化」であると浅利氏は言う。
「クライアント/サーバ型のアーキテクチャで生まれた製品は、純粋なウェブ型のアーキテクチャに変わらざるを得ないだろう」
では、どのようにしてウェブアーキテクチャへの作り直しはどのように進められるのだろうか。ERPパッケージのトップベンダーであるSAPやOracleにとっても、それは大きな課題となっている。
「SAPは新規に別系統のスイート製品として『SAP Business ByDesign』を開発し、本体には手を入れない賢明な判断をした。一方、OracleはE-Business Suiteをウェブ化したのは比較的早かったが、買収した製品の中には、クライアント/サーバで使われているものも少なくない」と浅利氏は指摘する。
クライアント/サーバ時代にスクリーン単位でつくられたシステムと、ウェブが前提である時代につくられたシステムでは、当然ベースソースがまったく異なる。そうした製品をがらりと作り直さなくてはならないのであれば、ベンダーにとってはかなりの負担となる。2015年ごろまでにERPベンダー各社が判断することになりそうだ。
「基本的には各社とも、全面的な作り替えの方針はとらず、SOA(Service Oriented Architecture)というキーワードでいなすのではないか。自社製品の内部のモジュールや、プログラムやデータを束ねるために、SOAを入れ込んでいるようだ」と浅利氏は指摘する。ERPベンダーの当面の課題は、自社製品をいかにウェブアーキテクチャへと全面的に移行するかであると言える。
「つなぐ」仕組みとしてのSOAだけではなく、「利用する」仕組みとしてSaaS型のアプリケーションも提供されるようになった。浅利氏は「これからはSaaS型アプリケーションとパッケージを組み合わせて使っていく時代になりそうだ」とみる。今後は、パッケージをベースとして、パッケージとサービスとを組み合わせたシステムが、ビジネスアプリケーションの主流になるのかも知れない。