ERPの未来--変わらない「ビジネスプロセス」、変わるのは…?

梅田正隆(ロビンソン)

2008-11-28 19:36

 ERPは、パッケージのモデルをよく理解した上で、初期の導入を果たすことができれば、2次、3次への展開、あるいは別の事業に展開するときに、非常に有効となる。それがERPの大きなメリットだ。

「ただ、企業のManagerial Accounting (管理会計) の考え方が先進的な場合は合わないだろうし、生産系が非常に複雑で動きが速いのなら、むしろERPを生産に直結しない方がいい」と、ITRのプリンシパル・アナリストである浅利浩一氏は言う。

 管理会計が物流や生産計画とほぼ同列に統合できているのであれば、そうしたシステムは残すべきであるという。ERPパッケージの会計系モジュールを生産系に直結すべきでないのは、たとえば何十万点もの部品を扱う生産ラインを持つ場合に、個々のパーツを追いかけても経営の視点では意味を持たないからだ。実際にはデータベースが大きくなり過ぎて、まともに動かないという理由もある。

 もっとも、今回の金融危機で欧米の足並みが乱れた国際会計基準であるとはいえ、財務会計の部分についてパッケージを利用すれば、そうした基準にもすぐに対応できる。パッケージを適用してメリットが出やすい業務を見極めることが肝要だ。

 浅利氏はERPパッケージの将来について「今後10年でなくなるようなものではない」とする。この先、ERPはどう変化していくのだろうか。この問いに浅利氏は「ビジネスプロセスに関しては、あまり変わらないのではないか」と応える。たとえば、SAP 4.0B (1998年から2000年ごろ) のSAP Business Frameworkの時代から、ビジネスプロセスの考え方自体は、基本的に変わっていないという。

「SAPのAP (アジア・パシフィック) 担当CTOに『変わらないね』と尋ねると、彼は『むしろ変わっていないことが価値だ』と言った。もちろん、製品の作り方やアーキテクチャは変わっているが、ビジネスプロセスのモデルや、プロセスの分け方といった基本的な考え方は、変化にさらされていないのだ」(浅利氏)

 ビジネスプロセスは、現実の業務をある視点から抽象化したものである。むしろ、その考え方がコロコロと変わる方が問題ともいえる。

これからの10年に起こるアーキテクチャの変化

ZDNET Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

ホワイトペーパー

新着

ランキング

  1. セキュリティ

    「デジタル・フォレンジック」から始まるセキュリティ災禍論--活用したいIT業界の防災マニュアル

  2. 運用管理

    「無線LANがつながらない」という問い合わせにAIで対応、トラブル解決の切り札とは

  3. 運用管理

    Oracle DatabaseのAzure移行時におけるポイント、移行前に確認しておきたい障害対策

  4. 運用管理

    Google Chrome ブラウザ がセキュリティを強化、ゼロトラスト移行で高まるブラウザの重要性

  5. ビジネスアプリケーション

    技術進化でさらに発展するデータサイエンス/アナリティクス、最新の6大トレンドを解説

ZDNET Japan クイックポール

注目している大規模言語モデル(LLM)を教えてください

NEWSLETTERS

エンタープライズ・コンピューティングの最前線を配信

ZDNET Japanは、CIOとITマネージャーを対象に、ビジネス課題の解決とITを活用した新たな価値創造を支援します。
ITビジネス全般については、CNET Japanをご覧ください。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]