(前編はこちらです)
ブロックアクセスの多様化
ブロックアクセス、つまりSANにおける通信技術(プロトコル)では、現在はファイバチャネル(Fiber Channel:FC)が主流であるということは、前回紹介した通りである。FCによるSAN(FC-SAN)は、サーバとストレージの接続インターフェースとして「マシンルーム内」や「データセンター内」で使用されるのが一般的だが、第2回でも紹介したように、近年は「災害復旧」(Disaster Recovery:DR)対策環境を構築するユーザーが増えてきている。
この際には、「FC-SANをWAN回線で接続する」技術が必要となる。WDM(Wavelength Division Multiplexing:波長多重分割)装置や長距離対応のコネクタ(Small Form factor Pluggable:SFP)を使用すれば、FCプロトコル自身をWAN環境で使用することも可能だが、WANで使用されるプロトコルとして現在最も一般的なものはIPである。そこで、FCをIPに変換する「FCIP(Fibre Channel over IP)」や「iFCP(internet Fibre Channel Protocol)」といった技術が、現在多くのユーザーで使用されている。
FCIPは、FCをTCP(あるいはベンダー独自のプロトコル)/IP上にカプセル化して、FC-SAN同士をIPネットワークを“つなぐ”技術である(図6)。FCIPゲートウェイ製品はFCスイッチベンダーなどから提供されており、現在WANゲートウェイ製品としては主流になっている。
一方のiFCPは、FCとTCP/IPネットワーク間のゲートウェイ機能を提供する技術で、FCIPと違い「マルチポイント接続を提供」する仕組みや「各サイトのFC-SANを分離」する仕組みをプロトコルの中で実装している。一部ベンダーが製品を提供していたこともあって使用していたユーザーも多く存在したが、現在はFCIP製品でも前述の仕組みを提供する機能が実装されており、iFCPを実装した製品は現在ではほとんど提供されていない。
コストメリットで注目されるIP-SAN
SANでは、FC以外のプロトコルも使用され始めている。その代表的なものが「iSCSI(internet SCSI)」である。iSCSIはSCSIプロトコルをTCP/IP上で動作させるプロトコルである(図7)。FCを使用したFC-SANに対して、iSCSIを使用したSANを「IP-SAN」などと呼ぶこともある。iSCSIプロトコルのメリットは、以下の通りである。
- 通常のL2/L3スイッチやNICなどのTCP/IP、Ethernet機器を使用でき、FC-SANに比べて導入コストを抑えられる
- 最も普及している、TCP/IPプロトコルの技術ノウハウを流用できる
- 多くのOSが標準でサポートしており、別途専用のハードウェアを導入しなくても使用できる