iSCSIはコストメリットという観点で注目されることが多く、特に低価格志向のシステムで使用されている。一方、iSCSIのデメリットは以下の通りである。
- TCP/IPを使用しているため、プロトコルのオーバーヘッドが大きい
- 通常のEthernetやTCP/IPには「データ損失」の可能性があり、ストレージトラフィックのやり取りには向かない
- サーバにかかるCPU負荷が大きく、現実的にはTOE(TCP/IP Offload Engine)など専用のハードウェアを必要とするケースが多い
- iSNS(internet Storage Name Server)など、iSCSI特有の技術を習得する必要がある
- IPアドレス設計などを管理者が行う必要があり、FCほど自動化されていない
TCP/IPをベースに実装されているiSCSIは、既存のLAN機器を流用できるというメリットがある一方で、上記の通りストレージトラフィックのような「効率よく大量のデータを処理する」用途には本質的に不向きである。また、TCP/IP技術は多くのネットワークエンジニアにとって馴染み深いものだと思うが、その上位で動作するiSCSIやSCSIの仕組みを理解するにはサーバやストレージ関連の知識が不可欠であり、ほとんどのネットワークエンジニアにとって未知のものであろう。したがって、FC-SAN(ファイバチャネル)とIP-SAN(iSCSI)は、システムの要件やコストに合わせて使い分けるのが現実的だと思われる。
なぜFCとEthernetは融合するべきなのか
その他のブロックアクセス技術としては、「SAS(Serial Attached SCSI)」や「Infiniband」がある。SASはパラレルSCSIにかわるSCSIの次世代技術として、現在使用されている。SASはエキスパンダを使用した複数デバイスの接続にも対応しているが(図8)、SANつまり“ネットワーク”技術としては位置付けられてはいない。
Infinibandは現在、サーバ間クラスタ向けなどのインターコネクトとして使用されているが、SRP(SCSI RDMA Protocol)というプロトコルを使用することで、その上位でSCSIコマンドを動作させることも可能である。ただ、Infinibandをストレージトラフィックのインターフェースとして使用する形態は、普及していない。
現在最も普及しているFC-SANであるが、その課題の1つが前回も紹介した「(LANとは別の)専用のネットワークが必要である」という点である。これも前回説明したが、これは特にデータセンターなどSANにおいても大規模なネットワークが構築される環境では、今後運用管理の面で課題となることが予想される。そこで次回は、FCとEthernetを融合する技術として現在規格策定中の「FCoE(Fibre Channel over Ethernet)/CEE(Converged Enhanced Ethernet)」を紹介する。
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最終回となる次回は「ネットワークからみたサーバ/ストレージ市場の未来」をテーマに、前述のFCoE/CEEなど将来のサーバとストレージを接続するネットワーク技術や、今後のサーバ、ストレージ、ネットワーク市場の方向性などについてご紹介する。次回もぜひ、お付き合いいただきたい。