技術の標準化に関する活動や、各所での実証実験が行われていることは聞こえてくるものの、かつて言われていた「身の回りのあらゆるモノに……」という状況にはまだ遠い印象があったRFID技術による「電子タグ」だが、その導入は、いよいよ一般消費者の手の届く範囲にまで近づいてきた。
平成20年度の経済産業省委託事業「IT投資効率性向上のための共通基盤開発プロジェクト」では、アパレル分野における効率性向上を目指したRFIDシステムの実証実験を行い、配送計画の高度化、店舗運営の高度化、マーチャンダイジング精度の向上という3つのポイントに重点を置いた実用性の検証を、2008年11月より実施している。
実証実験は、同事業の委託を受けた住金物産を中心に、アパレルパートナーとしてフランドル、システムパートナーとしてアイエニウェア・ソリューションズ(アイエニウェア)と東芝テックが参加して行われている。調査対象店舗として設定されたのは、フランドルの新宿のルミネエスト店と、船橋の東京ベイららぽーと店の2店舗。実証実験用のRFIDシステムの構築にあたっては、既存の基幹サーバ、物流センター倉庫管理システム、店舗側システム、値札発行システム、各種RFIDデバイスとのデータ連携が必須であったため、アイエニウェアのRFIDミドルウェアである「RFID Anywhere」を利用して、既存システムに大きな変更を加えずにモデルを構築したという。
単なる省力化を越えた戦略的なデータ活用が可能に
従来のバーコード印字のタグによる商品管理を、RFIDを用いた電子タグによる管理へと切り替えることで得られる第一のメリットは、物流センター側と店舗側、双方での大幅な省力化だ。
バーコードによる管理では、商品についているタグを一つ一つリーダーで読み取る作業が必要になる。そのため、これまで物流センター側では出荷時間の制約から出荷検品作業を行うことが難しかったという。電子タグでは、複数のタグから同時にデータを読み取ることが可能なため、作業時間が大幅に短縮。物流センター側に出荷検品プロセスを組み入れることが可能になり、同時に店舗側での入荷検品プロセスを省くことができるようになった。また、店舗側では棚卸しの作業に関しても、従来、閉店後に数時間かけて行っていたものが、数分程度に大幅に短縮されたという。