工事進行基準が原則適用となる「工事契約に関する会計基準」が、2009年4月1日以後開始の事業年度からいよいよスタートとなった。工事進行基準適用には、「成果の確実性」が認められることが必要となり、そのためには「工事収益総額」「工事原価総額」「工事進捗度」という三つのすべてのポイントにつき、信頼性をもって見積もることが要件となる。今回は、工事進行基準適用における「認識の単位」にスポットをあて、IT業界やソフトウェア業界に特有で重要なテーマとなる「分割検収」や「複合取引」への対応についてまとめる。
“分割して契約すればOK”ではない
工事進行基準適用にあたって、工事進行基準を適用する単位である「認識の単位」をどのように考えるかという問題がある。認識の単位として会計基準では、「当事者の合意にもとづく実質的な取引の単位」とあり、一般的には契約書を交わしたことで認識の単位とする。ただし、プロジェクトの契約内容とプロジェクト開発の実態が乖離しているような場合には、形式的に契約書を基準に判断するのではなく、実態が優先されることになる。
以前の「工事収益総額」を取り上げた回でまとめたように、ひとつの契約でプロジェクト開発が完結する場合には、その契約をもってプロジェクト全体を認識の単位とする。一方、その契約を大型のプロジェクト場合には、いくつかのフェーズを性質ごとにまとめたプロセスを別契約として締結し、それぞれの契約を認識の単位として成果の確実性が認められるものについては工事進行基準を適用する――という対応方法がある。
ここで、プロジェクトを分割しての契約で問題となるのが、「分割検収」との関係だ。分割検収は、ひとつの開発プロジェクトを分割して検収し売り上げを計上する方法であり、実務上も多く採用されている。 注意したいのは、ひとつの開発プロジェクトを分割して契約すれば、すべての分割検収について売上計上が認められるわけではない、という点だ。逆に言うと、会計上必要とされる分割検収の要件をすべて満たした場合にのみ、分割した単位での売上計上が認められることになる。
それでは、会計上の分割検収はどのように定められているのだろうか。企業会計基準員会から公表されている「ソフトウェア取引の収益の会計処理に関する実務上の取扱い」によると、収益認識すなわち分割検収のタイミングで売り上げを計上するためには、4つの要件を満たさなければならない。それぞれの要件と対応のポイントを見ていこう。