ルール設定で見積もりの標準化を--工事進行基準は経営健全化への道(前編)

木村忠昭(アドライト) 2009年03月13日 17時00分

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 工事進行基準を適用するポイントは、プロジェクトの受注金額である「工事収益総額」、プロジェクトの原価予算となる「工事原価総額」、決算日でのプロジェクトの進捗度合いをあらわす「工事進捗度」を合理性をもって見積もることにある。2009年4月から工事進行基準が原則適用となるが、そのためにはこれら三つのポイントを高い精度で見積もることができてはじめて「成果の確実性」が満たされ、工事進行基準を適用することができるのだ。

 前回は、その中のひとつである「工事収益総額」に焦点を当て、対応のポイントを紹介した。今回は、三つのポイントのうち、コストの見積もりにあたる「工事原価総額」を取り上げ、会計基準の内容と実務上の対応について紹介する。

工事原価総額に対する要件

 工事原価総額とは、その工事にかかる原価の総額、つまりプロジェクトの原価予算のことだ。工事進行基準では、工事収益総額に工事進捗度を乗じて各期の売上高を算出するが、その計算にあたっては、全体における原価の費消割合によって工事進捗率を算定する「原価比例法」が採用されることも多く、その分母には工事原価総額の金額が用いられることになる。

 また、開発プロジェクトから将来的に赤字が見込まれる場合には、その赤字の金額を、事前に損失として計上することがある。当初から赤字が見込まれている開発プロジェクトが存在することは経営上問題だが、会計上は、将来の損失の額を合理的に見積もる必要があるため、工事原価総額の精度の高い見積もりは不可欠となる。

 「工事契約に関する会計基準」によると、工事原価総額を信頼性をもって見積もるための要件として、「工事の各段階における工事原価の見積もりの詳細な積み上げ」や「工事原価の事前の見積もりと実績を対比することによって、適時・適切に工事原価総額の見直しが行われること」――などが定められている。これらの条件を満たし、なおかつ内部統制も整備された管理体制の構築が不可欠となってくる。

原価総額の積み上げは二つのやり方

 まず、「工事の各段階における工事原価の見積もりの詳細な積み上げ」について考えてみたい。工事の原価総額の見積もりの精度を高めるためには、工事全体を細かくブレークダウンし、その積み上げによって原価総額を算出する必要がある。

 ここで、工事原価総額の積み上げに必要な方向性として、大きく二つ考えられる。ひとつが、段階(フェーズまたはプロセス)ごとに開発工数を適切に積み上げることであり、もうひとつが、費用項目ごとに単価を設定し費目を積み上げることである。

 前者の精度を高めるためには、適切な段階(フェーズまたはプロセス)の定義付けを行うとともに、それぞれの工数見積もりの信頼性を向上させることが必要になる。これは、過去の開発プロジェクトの事例や各社にとって有効な開発管理手法などを参考に、組織としての工数見積もりの精緻化を行うことが有効だ。プロジェクトマネージャーごとに工数見積もりの精度にバラつきがあるようでは、工事進行基準適用のための工事原価総額の合理的な見積もりは難しいと言わざるを得ない。

 また、後者の精度を高めるためには、適切な労務費単価、製造間接費単価の設定を行うことが必要だ。このためには、社内で適切な原価計算制度が構築されていなければならない。ここで用いる単価は、将来の費用を見積もるための単価であるため、原則として将来の予算と稼働率から導き出された単価でなければならない。このように、工事原価総額の合理的な見積もりのためには、精度の高い予算編成と予算管理も対応すべきテーマとなり、これらも合わせた高度な管理体制が求められるのだ。

 以上のような工数と単価の見積もりの精緻化がともに行われてはじめて、工事原価総額の合理的な見積もりが可能になる。このような工事原価総額の見積もりを実施できる社内の運用ルールを設定し、その原価予算に対する承認が適切に行われていることが必要だ。内部統制の観点からは、見積もり履歴や承認履歴の保持も欠かせない。

(後編は3月19日掲載予定です)

木村氏
筆者紹介

木村忠昭(KIMURA Tadaaki)
株式会社アドライト代表取締役社長/公認会計士
東京大学大学院経済学研究科にて経営学(管理会計)を専攻し、修士号を取得。大学院卒業後、大手監査法人に入社し、株式公開支援業務・法定監査業務を担当する。
2008年、株式会社アドライトを創業。管理・会計・財務面での企業研修プログラムの提供をはじめとする経営コンサルティングなどを展開している。

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