出世の階段を上っていけるかどうかは、社内政治のスタイルに大きく左右される。米国大企業の最高経営責任者(CEO)たちが、頭の切れる、自信に満ちあふれた人物であり、輝かしい業績を残してきており、リスクに立ち向かうべき時とじっと堪えるべき時をかぎ分ける直感を持っているのは確かである。しかし、彼らの社内政治におけるスタイル、すなわち権力の行使や、管理、人間関係の構築、外交的な手腕の発揮といったことを行う方法こそが、彼らの決断や行動を裏付けているのである。本記事では、ここ10年における最も著名なCEOたちの社内政治のスタイルと彼らの築き上げたキャリアを採り上げている。
Steve Jobs氏
AppleのCEO
社内政治のスタイル:カリスマを備えた野心家
Jobs氏の持つ最大の資産は情熱である。Jobs氏はこれによって、従業員のモチベーションを高めたり、交渉を優位に進めたり、次世代の素晴らしいApple製品とともに同氏の熱意に惹きつけられるコンシューマーを育て上げているのだ。Jobs氏の留まるところを知らない精力と情熱により、従業員のやる気が引き出されるとともに、彼らに不可能をも可能にできるということを得心させているのである。一方、恐れによってやる気を引き出されている従業員もいる:Jobs氏は従業員に対して「こんなものはくそだ!(This is shit!)」と告げることで有名である。しかしJobs氏は、数日後に改善されたものを見せられると、同じアイデアを素晴らしいイノベーションだと評することもあるのだ。自らの考えをはっきりと述べ、断固とした口調で単刀直入にものを言うJobs氏はマイクロマネージャーと称されている--これは同氏が非常に高い理想を持っているが故のことである。また、Jobs氏は形式にこだわらないことでも知られている:分かり易い言葉で話し、Levisのジーンズを履き、従業員の傍らで仕事をするのである。
長所:Jobs氏の情熱は伝染しやすく、説得力があり、活気を与える力もある。また、同氏のカジュアルな服装と率直な話し方は、近付きやすい印象を与える。Jobs氏は相手に対する高い期待と、細部へのこだわりという点で高く評価されている。
短所:多くの有名なアーティストやシェフの場合と同様に、Jobs氏の情熱には影の面がある:ものごとがうまくいっていない時、同氏はかんしゃくを起こすこともある。そして、そういった騒ぎによって人々を遠ざけるおそれもあるのだ。また、同氏のマイクロマネジメントや完璧主義についても同じことが言えるだろう。