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ある経営者の回想(後編)--事業の主役はP/LとC/F、B/Sはあくまで裏方

森川徹治(ディーバ)

2009-08-05 08:00

前編はこちらです

事業資産の最適化は常に行うべきもの

 厳しい状況であるほど、事業資産の評価も、再配置も真剣に行う。しかし、普段から準備してこなかったことをやるには、相当の労力を投入しても品質がなかなか上がらない。

 また、大きな構造転換は組織への影響も大きい。事業環境の変化によって、“事業資産の構造転換をしなければならない、これは非常事態であるので、犠牲もやむなし”というのは正論であるが、構造転換の影響が大きいほど、なぜここまで影響が大きくなったのだろうか。そういう疑問が強く生まれる。事業環境が常に変化している以上、会社も常に構造転換を続ける必要があり、そうすることで組織や、そこに所属する人、さらには利害関係者(ステークホルダー)に対するバランスがもっと適切にとれるのではないかと考えるようになる。

 これでようやく、事業資産というものの適正価値把握に対する必然性を認識する。時価評価(公正価値評価)という考え方は、事業資産の価値を実態に合わせるという結果だけではなく、定期的に事業資産を評価するというプロセス自体が、事業資産の最適配置を担う経営にとって、その判断をより適切に行うために欠かせないのである。昨今、時価会計に対する是非論があるが、経営品質を上げていくという観点からは十分な必然性を持つものである。

不完全なB/S情報

 事業資産の最適化において貸借対照表(B/S)は欠かせない。しかし、現在のB/S情報は万全ではない。知的財産など「インタンジブルアセット」と呼ぶオフバランス(B/Sに乗ってこない)情報もたくさん存在する。

 特に事業活動の根幹をなす人的資産についての評価が全く反映されていないことが気になる。社会的に、人間を資産評価するということに強い抵抗があるのは当然だ。しかし、実際には人事という形で人的資産は配置されるし、人事評価という視点で価値評価している。にもかかわらず、人的資産を重要な事業資産と位置付け、積極的に資産評価を行わないことで、会計情報の活用範囲も限られてしまう。

 利益とは、売り上げと費用のギャップである。このギャップを大きくする上では、大抵の企業において費用の多くを占める人件費のコントロールは重要である。しかし、費用としてのみ認識していると、どうしてもいかに全体として抑制するかという視点が強くなる。会社が自分の持ち物として所有するものではないが、(人材ではなく)“人財”を人的資産と認識し、その価値向上を通した事業活動を推進することが今後重要になると考える。

B/Sだけでは経営にならない

 B/Sの意義がわかってくると、俄然B/Sに思考が偏る。そんな時にある機関投資家の方からの一言が突き刺さる。「最近の風潮として、やたらB/S重視しすぎなんですよね。投資判断する側にとっては、B/Sは単なる参考資料、基本はP/L(おそらくC/Fの方が意味は近い)ですよ」という話である。プロの投資家にはそれぞれの視点があるが、この一言によって目から鱗が落ちる思いだった。

 やはり、事業とはC/F(キャッシュフロー)だ。その事業をより効果的に運営していく上でB/Sがある。主従関係があるとすると、事業活動における主役はC/Fであり、P/L(損益計算書)である。そして、B/Sとはそれを支える裏方ではないのかという考え方である。

 しかし、一通りの財務情報の意義を俯瞰する視点を持つと、単なるキャッシュフロー志向とはならない。キャッシュフローの実現に集中するとしても、その元となる資産を意識するようになる。

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