従業員こそが企業そのもの--企業価値最大化につながる人財価値最大化

斎藤和宣(ディーバ) 2009年10月14日 08時00分

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 「今こそ知っておきたい“連結経営”の勘所」と題して、これまでさまざまな考察をしてきたが、最終回の今回は、企業にとって最も重要な(人材ではなく)“人財”について考えてみたい。グループとして企業価値の最大化をすることが、「連結経営」の目指すところだ。しかし、グループ全体として人財をきちんと認識し、経営管理サイクルの中で人財価値を最大化する経営を実践できているかは、非常に疑問が残る点である。

どこまでが人財?

 まず、人財をどのような範囲でとらえて測定していけばよいのか考えてみよう。「わが企業グループの人財」と言った場合に、いったいどの範囲の人が含まれるだろうか。

 会計制度の世界では、「連結範囲」という表現がされるが、連結範囲の設定にあっては資本関係というお金の関係を中心に範囲をとらえることになる。ただしそれだけではなく、(役員の派遣状況などの)人的なつながりも考慮して連結範囲が決められていく。

 ただ、会計制度と同じ範囲定義の仕方で、そのグループ企業に所属する人財をグループ全体の人財と把握してよいかは、問題があるかもしれない。人的なつながり(交流)のレベルだけにより、グループ範囲を定義する考え方によればである。とはいえ、経営者に託された企業価値最大化の責任を考えれば、経営者としてはグループの人財をとらえる範囲として、会計上の定義と同じに考えておくことは自然なことと思われる。

 なお、持分法適用会社については、その認識方法は会計と人財では内容が異なるだろう。会計上は連結財務諸表を作成するにあたって、当該持分法適用会社の財務諸表自体は合算されることはなく、利益の持ち分相当だけが計上される。一方、人財の場合には、子会社と持分法の間での相違はなく、経済的に読み替えるのであれば持ち株比率相当を認識すればよく、双方とも同様の把握の仕方になると考えている。

 また、同じ会社の中でも働き方にはいくつもの形態があるため、その対象をどこまでにするかもまた、厄介な問題である。正社員と呼ばれる形だけでなく、パートタイマーやアルバイト、派遣社員といった形態があり、企業としてどこまでを人財の範囲と定義すべきかは難しい。

 逆に、実際の現場において、どのような業務の仕方になっているのかを反映すべきであり、一律で定義するよりも各企業(グループ)で実態に合ったものに定義すれば足りると考える。これらのことを踏まえて、あえて定義するとすれば、企業グループにおける財産として、成長のための投資をし続ける対象であれば、人財と呼べるのではないだろうか。

人財価値のマネジメント

 人財の範囲が定まれば、次はその人財価値を最大化するために、経営管理サイクルの中でマネジメントしなければならない。マネジメントである以上、計画の策定とその進捗管理が必要になるが、現状では「人数」という測定単位で把握するレベルに止まっているのではないだろうか。

 本来は、企業グループにどのようなスキルをもって活動をする人財がいて、各人がどのような成長を遂げようとしているのか、そして、この先どんな形に成長することを目標とするのか、企業グループとして把握できていなければならないのに、それができていないのではないだろうか。人財を人数だけで計測してしまうことになると、その価値提供力としては、実際の場面で発揮される力も異なるし、発揮される領域や局面も異なるために、有用ではなく、異なる人財を同じように“1人”と認識していては、課題が大きいのである。

 また、グループ全体として人財価値を最大化するといっても、必ずしもすべてのレベルでグループ全体を一つにしてマネジメントする必要はないと考えている。当然、人財の最適な配置はグループ全体で意志決定しなければならないが、各人の成長のための学習機会や業務経験を考慮し人財価値を高めていく作業は、会計における事業セグメントのように、人的まとまりの中で整理されるグルーピングとして、PDCAサイクルを運用していければよいのではないかと考えている。

人財を表現する

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