なぜIFRSは“必要”なのか--経営を支える連結会計から見えてくる真実

森川徹治(ディーバ) 2009年07月15日 08時00分

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 前回(「そもそも『連結経営』とは何か?--損益計算書と貸借対照表の“微妙”な関係」)、連結経営はグローバル社会からの要請であると書いた。その流れで言うと、連結経営はグローバル社会が抱える、さまざまな“課題”と密接な関係を持つことになる。ここで言う課題とは“違い”と言い換えることができる。連結経営では、この違いを効率良く吸収していくことが求められる。今回は、違いを吸収する会計としての連結会計を中心に話を進めよう。

統治の効率と連結経営

 古代ローマでは、異なる文化の統合を無理に行うことをせず、文化の違いを認め、それぞれの文化を活かした統治(ガバナンス)を行っていたという。その統治方法は、現実を直視した合理的判断に基づくと言われている。

 時代が下って近代になると、異なる文化を持つものに対して徹底した同化政策が採用されたケースも存在する。しかし、実際のところ、同化政策に対するコストは思いのほか高く、その効果は低いと言わざるを得ない。

 同化政策はあくまでも、支配する側からの論理であり、支配される側の意志を無視したものだからだ。ガバナンスとは、一方的なものでいいというわけではなく、相互のバランスの上に成立するものだ。

 企業グループのガバナンスも同様である。会社という法的に保証された組織に対して相応の自治権を認める連結経営は、異なる文化を活かしたガバナンスを機能させることができる。これは、経済合理性の観点からも有効である。

 連結経営とは、企業文化を含む、さまざまな違いを“統合”するのではなく、そもそも違うということを前提にして、事業活動上必要な「度量衡」を整備することで、効率的に“連結”し、異なる企業を統治するという経営の意志である。

事業経営にとっての「度量衡」

 度量衡とは、世の中に存在するモノを計測する基準である。原意は長さ、面積、重さなどを示すものだが、社会が発展するにつれ、計測される対象も広がってきている。その過程とともに、それぞれ異なる度量衡を持つ国々も、貿易などで相互の結びつきが強くなるにつれ、必要に応じて度量衡も共通化されるようになってきている。

 事業活動の結果と事業資産の状況を表す財務諸表を作成する目的において、事業活動などを計測するための会計基準は、事業経営の度量衡になるはずだ。しかし、この事業経営の度量衡は、さまざまな事情から意外なほど共通化されていない。

 日本国内で言えば、企業は「商法」「税法」「金融商品取引法」という3つの度量衡で事業活動を計測することが法律で定められている。会計基準というと、有価証券報告書などの作成を定めている金融商品取引法に関心が集まるが、上場企業の場合、最低3種類の財務諸表を作成していることになる。もちろん、基本となる会計方針については共通となるが、最終的な利益の認識などには相違がある。

 商法は、日本国内における商取引全般を円滑に行うためのものである。対して、税法とは、政府や地方自治体が税収を得るためのものである。そして金融商品取引法は、直接金融市場である証券取引市場で投資家を保護することを目的としたものである。目的が異なる法律が、それぞれの立場から事業活動の計測を企業に求めているのである。

世界に直結する金融商品取引法

 商法、税法、金融商品取引法はいずれも日本の法律である。しかし、誰のためのものかという点が大きく異なる。なかでも金融商品取引法は投資家保護を目的としていることから、他と大きく性格が異なってこざるを得ない。

 証券取引は、あらゆる資産に対する証券化を実現した金融工学と、あらゆる情報を大衆化させたインターネットを代表とする通信技術の発展で、世界中の投資家が参加できるグローバル市場で行われるようになっている。

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