人的資源の分配は、経営者にとって極めて重要な意思決定となる。しかし、企業の時間や労力、関心、資金の大部分は、経済的成果につながる「機会」ではなく、「問題」に向けられている、とDruckerは指摘した。
さらに、企業の売上と労力が、成果ではなく活動の数に応じて分配される傾向があり、例えば高度な訓練を受けた社員のような、最も高価で高い生産性を秘めた資源ほど、分配は最悪のものになりやすい、とも述べている。
競争優位の源泉は、外と内のどっちにあるか?
その理由は、多くの企業では、ナレッジワーカーという資源のほとんどが、成果ではなく処理件数で、あるいは生産性ではなく難易度で、あるいは明日の機会ではなく昨日の問題を基準として、分配されているからだ。
その上でDruckerは、経営者の真の仕事は「意思決定」と「実行」にあるとし、特に高い能力を有する人的資源については、最も有望な分野のニーズを満たすために優先的に分配しなければならない、と提言している。
その結果、生産的な資源が尽きてしまい、他の分野に分配できなくなったとしても、潔く諦めるべきで、そうした苦渋の意思決定、リスクを伴う決断の対価として経営者への報酬が支払われている、と述べる。このように、人的資源の分配とは、昔から重要な意思決定なのである。1963年の論文だが、現在の企業にも通じる指摘だと思う。
経営戦略論においては、1980年代前半は競争優位の源泉として、外部要因に着目した「ポジショニングアプローチ」が脚光を浴びた。戦略的ポジショニングが競争優位の源泉であるとの主張である。以前、「戦略立案の基礎--戦略的に考えるための7つの便利なフレームワーク」で紹介した、Porterの「5 Force」による業界構造分析は広く知られている。
一方、1980年代後半からは、外部要因に競争優位の源泉を求めるのではなく、企業内部に蓄積された資源や能力に着目する「資源ベース」のアプローチ(Resource Based View) が提案された。Birger Wernerfeltは、組織固有の「希少性」や「模倣困難性」を有する経営資源が、競争優位の源泉であると提言した。