MicrosoftのCEO、Steve Ballmer氏は11月5日、東京都内にて開発者向けのイベント「Microsoft Developer Forum 2009」に登場し、「Developer! Developer! Develper!」といつもの決まり文句で会場を沸かせた。
なぜBallmer氏は「Developer! Developer! Develper!」と叫ぶのか。それは「開発者こそがイノベーションを生み出す源。ITの価値を創造しているのも開発者だ。この業界で一番重要な開発者に敬意を表したい」と同氏が考えているためだ。1975年に設立されたMicrosoftが最初にリリースしたのも開発者向けのツールで「顧客も開発者だった」ことから、「価値を生み出す者としても、そして顧客としても、開発者はMicrosoftにとって欠かせない存在」なのだ。
特に日本では、「ハードウェアや自動車、エレクトロニクス、モバイル製品などのコアテクノロジが開発されているという強みがある一方で、成長の機会は他国より大きい」とBallmer氏は見ている。「例えば、米国の人口は日本の人口の2.5倍であるにもかかわらず、PCの出荷台数は日本の4倍。つまり、日本でもっとPCが売れてもいいはず。政府機関やスモールビジネス、そして高齢者など、誰でも使えるようなコンピュータソリューションを日本社会に投入する機会がある」とBallmer氏は言う。
未来のコンピューティングの世界を見据えた時、「クラウドコンピューティング」というキーワードが欠かせないものとなっており、Microsoftでも「Software + Services」というコンセプトを掲げてクラウドに取り組んでいるが、「Microsoftはどの程度本気でクラウドに取り組むつもりなのか、という質問をいやというほど受ける」とBallmer氏。このような質問に対し同氏は、「なぜこのような質問をするのかさえわからない。クラウドは未来の姿で、Microsoftは未来にコミットしている。つまりクラウドに真剣に取り組んでいるのだ」と少し興奮気味に答える。
「クラウドはこれまでのMicrosoftのビジネスモデルと違う、Microsoftは過去のビジネスにとらわれてクラウドを支持しないと考える人もいるようだが、われわれはすでにクラウドプラットフォームのWindows Azureにも取り組んでおり、クラウド環境でのSharePointも展開している。Microsoftは誰よりも早くクラウドに向かって進んでいるのだ。世界で一番使われているクラウドサービスはGoogleの検索エンジンかもしれないが、それ以外のクラウドサービスを考えた場合、Windows Azureが提供するものはAmazon.comが提供しているサービスと同様PaaSの最先端であるし、Microsoft OfficeやSharePoint、Exchangeなどで提供しているサービスは、Salesforce.comのサービスと同様SaaSの最先端なのだ。クラウドサービスで一番人気が高いのは検索技術だが、Microsoftは新しい検索エンジンBingでもイノベーションを続けている。Microsoftは100%クラウドにコミットしているし、その中でリーダーシップも発揮したいと考えている」(Ballmer氏)
こうしてクラウドへの本気度を強調したBallmer氏は、コンピューティングを使った具体的な未来の世界についても思い描いているようだ。
「例えばテレビを見ていてTiger Woodsがすばらしいパットを決めたとしよう。その時テレビに向かって私が“ヘイBill! 今のTigerのパットを見たか?”と話しかければ、テレビが私の音声を認識してどの“Bill”に話しかけたいのかを理解してくれる。私の友人Bill Gatesは、世界のどこかで私のメッセージを受け取り、その場でTiger Woodsのビデオを見ることができる。それを見たBillが“Tigerはどこのパターを使っているのかな?”と言うので、私はポインタでパターを指し、インターネットが自動的に画像検索するのを待つ。検索エンジンは、“Nikeのパターのようですね”と教えてくれると同時に“お買い上げになりますか?”と聞いてくる。私は“もちろん。Billにも1本オーダーしてもらえるかな”と言う。これが未来の世界だ。このように、人々の経験をより豊かにするためのツールがソフトウェアなのだ」(Ballmer氏)
最後にBallmer氏は、「この世で一番生産性を向上させることができ、イノベーションや経済発展を支えられるのは、君たち“Develper! Develper! Develper!”にほかならないのだ」とエールを送り、会場を後にした。