NECは11月12日、広域環境でさまざまに変化するセンサーや画像などのリアルタイム情報の運用管理を“イベント通知”技術を活用したストレージシステムを構築することで可能となる情報基盤技術の開発に成功したことを発表した。
現在、ネットで情報を提供するサービス事業者は、構造化データをデータベース(DB)で集中管理して検索する手段を提供しており、ユーザーは検索結果の中から必要な情報を選択するという使い方をしている。
それに対して、センサー情報や画像データなど逐次変化するデータは、テキスト情報を含まずにDBのように整理された構造を持たない“非構造化データ”の形で保存される。こうした非構造化データが広域に分散して情報発信が行われた場合、従来の集中型DBでは管理が難しく、サービス事業者やユーザーの情報活用も難しいものとなっていた。
今回同社が開発した技術は、プッシュ型とプル型を併用したイベント通知技術を“広域分散情報流通ストレージ基盤”で活用するというものだ。
プッシュ型は、多数の機器の間でリアルタイムに情報を配信する技術であり、プル型は、近隣の論理ツリーから情報を検索して、即座に結果を得るという技術だ。
プッシュ型とプル型を併用することで、ネットワーク負荷の増大を防ぐとともに、リアルタイム性の高いイベント通知が可能になったとしている。1億台の端末でイベント通知ツリーを構成した場合の小規模実験に基づいた机上計算によれば、イベント通知に必要な時間を1秒以下に抑えられるとしている。
広域分散情報流通ストレージ基盤は、地理的に離れた複数台のサーバ間でデータの同期や更新情報の伝達に、イベント通知技術を活用することで、不用意なデータ参照トラフィックを削減できるという。データを検索するときにも、イベント通知を活用した情報検索を行うことができ、地理的に、あるいはネットワーク的に最適なサーバを選択した上で、データを配信できるという。こうした工夫で、レスポンスが良く、リアルタイムに最新情報を提供できるストレージ基盤が実現したとしている。
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今回の広域分散情報流通ストレージ基盤は、リアルタイム性は高いが、広域管理に向かない集中型のデータ管理と、リアルタイム性は低いが、広域管理に向く分散型という2つのメリットを併せ持つことができる。生成、消滅、更新を頻繁に繰り返す、広域に分散した非構造化データの最新状態や位置を瞬時に把握して、瞬間瞬間に起きている今の情報をリアルタイムに共有できるとしている。
開発された広域分散情報流通ストレージ基盤は、交通渋滞や災害など最新情報を複数のユーザーで共有するリアルタイムアプリケーションを容易に構築できる基盤として期待できるとしている。
今回の研究開発は、情報通信研究機構(NICT)の「次世代ネットワーク(NGN)基盤技術の研究開発」の委託で行われたもの。NICTとNECは、今回の成果がNGNの効率的活用や新サービスの提供に寄与できるよう今後も研究開発を続けていくとした。