宇宙船「エンデバー」のMark Polansky船長、若田光一飛行士らが、12月8日にNEC本社を訪問。社長の矢野薫氏など、NEC幹部と意見交換を行った。
若田飛行士は、スペースシャトルエンデバーに搭乗し、2009年7月に国際宇宙ステーションの組み立てミッションのひとつとして、日本の宇宙実験棟「きぼう」の組み立て作業を行ったが、この作業に使用したロボットアームや、実験装置をはじめとする複数のきぼう関連装置はNECの開発によるものだ。その協力関係を背景に、エンデバーのクルーによるNEC訪問が実現した。
Polansky船長、若田飛行士などを出迎えたNECの矢野社長は、「NECの本社ビルであるスーパータワーは、スペースシャトルに似たデザイン。本当の宇宙飛行士にきていただき光栄」と、冗談で場を和ませたあと、「NECは20年以上にわたり、ロボットアームや実験装置、筑波宇宙センターの衛星間通信システム地上局など、きぼうに関わる多くの装置を開発してきた。日本人のみんなが、日本の宇宙ステーションきぼうの完成を心待ちにしていた。そして、これは子供たちに宇宙への大きな夢を与えるものだと考えている。NECは、引き続き新しい技術を開発していく」などと語った。
これに対して、Polansky船長は、「NECには、きぼうの重要な装置を開発してもらい、大変感謝している。日本と日本の皆さんにとって大変重要なことに携われて嬉しい」とあいさつ。若田飛行士は、「NECが開発した装置の品質には本当に感激している。宇宙空間という大変厳しい環境のなかでの長年にわたる安定運用を実現している。NECのハード、ソフト、そしてそれを開発する技術者と一緒に働けることは光栄」などと語った。
NECの宇宙事業への関わりは長い。
1956年、ロケット用テレメトリ送受信装置を東京大学生産技術研究所に納入したのが、NECの宇宙事業のスタートである。振り返れば、実に50年以上の歴史があるのだ。
1961年には、電波機器事業部に誘導飛翔体部門を設置するとともに、1967年には宇宙開発本部を設置して、宇宙事業を本格化。1970年には日本初の人工衛星「おおすみ」を東京大学に納入し、その後も気象衛星「ひまわり」などの数多くの衛星に、NECの技術が採用されている。2007年に打ち上げられた月周回衛星の「かぐや」もNECが開発したものであり、日本で製造される人工衛星の7割がNECおよびNEC東芝スペースシステムによるものになっている。
また、1992年には人工衛星の姿勢基準になる「地球センサー(ESA)」を世界の衛星市場へ販売。2009年8月には、米ロケットエンジン大手であるAerojet-Generalと、イオンエンジンに関する提携を行い、今後、Aerojet-Generalが開発する人工衛星向け新型エンジンにも活用することになっている。
現在、災害監視、環境監視、科学研究の「宇宙ソリューション」、人工衛星・探査機、地上システム、宇宙ステーション、各種試験装置などの「宇宙テクノロジ」の2つの柱で事業を構成している。
NECによると、2008年度の宇宙事業の規模は約500億円だが、約10年後の2019年度には、現在の2倍となる1000億円の事業規模を目指しているという。NECが宇宙事業に深く関与していることは意外と知られていない。だが、こうした宇宙における実績が、NECの通信事業などに生かされていると考えるのは自然なことだろう。NECの隠れた実績が、通信事業や制御技術などの向上に一役買っているのだ。