プロジェクトでのコミュニケーションに「メール」を使うと生産性は低下する?

後藤康成

2010-03-30 15:00

(編集部より:連載「ITコミュニケーションのお作法」では、主に新社会人に向け「仕事」としてメールやウェブサービスを使っていく際の心構え、ツールの紹介などを7回にわたって掲載する。筆者の後藤康成氏は、3月1日にスタートした「feedpath Rooms」などのウェブサービスを提供するフィードパスのCTOである。前回の記事はこちら

 この連載「ITコミュニケーションの作法」では、企業で利用されるさまざまなITコミュニケーションツールと、そのTPOに合わせた利用法を考えてきた。最終回となる今回は、主に「企業と企業との間」で「継続的に」利用する際にふさわしいツールのあり方について見ていこう。

 これまで紹介してきた、ブロググループウェアインスタントメッセンジャー(IM)などのツールは、主に企業内でのコラボレーションに適したスタイルで機能が提供されている。ブログ、IMはもともとコンシューマー向けツールとして世に出たものだが、企業内で利用するにあたっては、権限や公開範囲の設定、承認機能、ログ管理機能、セキュリティ面などで調整が加えられ、企業での共同作業、情報共有に適した形で展開されているケースがほとんどだろう。

 一方、近年「メール」といえば、企業内のみならず、世界中の人とコミュニケーションを取ることができる「インターネットメール」として運用されているケースがほとんどだ。企業間でのメールコミュニケーションを分類すると、アポイントメントや情報交換といった「単発」のメールメッセージ交換と、顧客とのコミュニケーション、委託先とのコミュニケーション、アライアンス先とのコミュニケーションなどの「継続的」なコミュニケーションに分類できる。

 「継続的なコミュニケーション」の例を挙げてみよう。たとえば、弁護士事務所であれば、顧客となる企業と複数回の契約書のやり取りが発生する。ウェブ制作会社であれば、制作に関わる細かな調整や成果物の納品作業をクライアントと行うことになる。ベンチャーキャピタルであれば、投資先と経営状況や事業成長のためのアライアンスに関するコミュニケーションをかなりの長期にわたって継続的に行うことになる。

 さて、ここであえて、今では当たり前になりすぎてしまった「メール」というツールの弊害について考えてみよう。単発のコミュニケーションであれば問題は起こりにくいかもしれない。ただし、「継続的なコミュニケーション」を行う場合は、互いの間で複数回のメッセージのやりとりが発生し、過去にやり取りしたメッセージの経過を頻繁に確認する必要が出てくる。

 ある案件に関連したメールのやり取りは、徐々に関連のないメールと一緒に、メールボックスに埋もれがちになる。その際、無秩序な「返信」「転送」「Cc:」「Bcc:」が行われることによって、さらにやり取りの経過を追うのは困難になる。そして、それらにファイルが添付されている場合、以前に受信したメールに添付されているファイルの検索に多大な時間を費やすケースも出てくる。もちろん、ファイルのバージョン管理なども不能だ。そこに追い打ちをかけるように、スパムメールなどが検索性を阻害する……。

 こうした過程を経て、メールでの継続的なコミュニケーションはストレスを増加させていく。すべての企業間コミュニケーションをメールに頼ることは、最終的に生産性を低下させることにもなりかねないのだ。

 ここで発想を変えてみよう。企業間で行うメッセージングベースのコミュニケーションのうち、「継続的」なものについては、メールをメインのツールとして使うことをやめてみるのだ。

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