日本IBMは4月12日、第一生命保険との共同研究プロジェクトにて開発した分析ソリューション「プロセス・セマンティック分析ソリューション(IBM Semantic Analysis Solution for Process Optimization)」を今後他社にも提供していくと発表した。日本IBMと第一生命保険の共同研究プロジェクトは、保険事務の品質向上および効率化を図るためのもので、3月に完了している。
プロセス・セマンティック分析ソリューションは、IBMの東京基礎研究所と米国IBM Thomas J. Watson Research Centerが開発した分析手法で、大量の業務システムログから事務フローの実態を可視化し、業務の課題となる情報を取り出すことができるというもの。東京基礎研究所では、複雑な事務工程が存在する保険の事務プロセスに、同ソリューションを適用することに着目し、第一生命との共同研究を開始した。その結果、各案件の業務実態や課題が可視化でき、保険金や給付金支払い業務の一部への適用だけで年間数千万円のコスト削減が可能な改善点を見出すことができたとしている。
具体的には、業務システムログから、案件単位に各タスクの意味や担当者の役割、問題の有無などをビジネスの観点から意味のある情報となるように抽出し、その結果を部門全体で集約して統計分析手法を適用する。この分析結果から、各案件の業務実態を把握し、改善領域を特定する。分析対象となるのが自動的に取得されている既存システムのログであるため、現場担当者や分析担当者への負荷が少なく、何度も繰り返し分析でき、定期的な傾向分析や効果測定を行って業務改善の進捗を継続的に確認できるとしている。
このソリューションは、分析技術に加え、「IBM SPSS Statistics」、「DB2 9」、「IBM Cognos 8 BI」といったIBMのソフトウェアを活用しているという。
今回の協業は、IBMが全世界で展開する「First-of-a-Kind(FOAK)プログラム」の一環となる。このプログラムは、IBMが顧客のビジネスの発展を目指し、顧客と協力しながらソリューションを作り出すというものだ。今回発表したソリューションについて両社では、第一生命の業務ノウハウとIBM東京基礎研究所のプロセス・セマンティック分析技術、IBMのコンサルティングによる保険業界向けBPM手法による協業の成果だとしている。
IBMでは、社内外に存在する情報をビジネス分析に活用し、意志決定や新サービスなどの創造を支援する「BAO(Business Analytics and Optimization、ビジネス分析と最適化)」を強化しており、今回の第一生命とのプロジェクトがBAOにおける東京基礎研究所の研究成果を活用した保険業界初の共同研究プロジェクトだとしている。今回のソリューションは、IBMの提唱する次世代の保険事務の自動化モデル「Insurance Operations of the Future」を構成する重要な要素として位置付けられ、今後保険事務改革ソリューションの一部として提供されるという。