MS開発部は、マイクロソフト製品を核にビジネスを展開する部門だが、この課題に対してはマイクロソフト製品に限らず他社のソフトウェア管理ソリューションなども含め検討をスタートした。部門が設置された当時は、まだ仮想化はそれほど大きなテーマとはなっていなかったが、検討の結果、マイクロソフトのアプリケーション仮想化ソリューション「Microsoft Application Virtualization (App-V)」の導入を決定することになった。

その経緯について、NTTデータ 基盤システム事業本部 MS開発部の甲斐友哲氏は次のようにコメントしている。
「実際にApp-Vをさわり始めたのは2008年8月からです。App-Vに載せるアプリケーションをひとつひとつ、OSのバージョンごとに検証していきました。実際にバージョンアップさせてみて、例えばOfficeにService Packをあてたものを配布した時にどのような影響が出て、エンドユーザー側でどのような状況を想定しなければいけないかなど、いろいろな検証作業を行いました」
200種以上のアプリケーションを検証
App-V導入の決め手になったのは、ソリューションとしての完成度の高さだったという。MS開発部は導入のしやすさ、導入コストはもちろんのこと、各機能についても詳細な表を作り、比較検討を繰り返した。結局は「仮想化基盤としての完成度の高さ」が決め手になった。当時、App-Vはすでにバージョン4.2に達していたが、他のソリューションはまだバージョン1や2という段階にとどまっていた。ソリューションとしては、まだ十分練れていないところがあったのだ。
また、対応するアプリケーションの数も決め手となった。社内で利用するアプリケーションをApp-Vと他ベンダーのソリューションで検証してみたところ、App-Vに合うアプリケーションのほうが多かったのだ。
「App-Vが魔法のソリューションでないことは知っています。社内のアプリケーションの中でApp-Vに合わないものも実はありました。しかし、さまざまな調査とApp-Vの拡張性を生かした利用方法を整理することで応用範囲が広がり、App-Vを利用するにあたっての問題点を乗り越えました」(大西氏)
しかし、App-Vの導入を決定してからも、本格的な展開は容易ではなかった。むしろApp-Vの採用を決めてからMS開発部の本当の作業が始まったと言えるだろう。MS開発部で利用していたアプリケーションの数は約60種だが、実際に検証したのは200種以上に上る。
当初の苦労について大西氏は、「ユーザーアカウントひとつとっても、人が増えた時どうやって割り当てると組織的にうまく行くか。管理基盤を作ることはできても、それを配布するのにコストがかかると無意味なので、効率的にできるようなソフトウェア管理の仕方みをどうするかなどを検討していきました。模範解答があるわけではないので、私たちが実際にトライアンドエラーを繰り返しつつ、検証作業を進めていきました」と語る。
App-Vはあくまでも管理、配信のためのレールの部分に過ぎない。配信するソフトウェアをどう構成するかなどはアプリケーション自身に対する知識が求められる。そしてアプリケーション仮想化の設定はまさにノウハウになる。つまり、こうした検証作業のひとつひとつがMS開発部のノウハウ、強みになっていくわけだ。
MS開発部が採用したのは「仮想アプリケーション配信方式」である。アプリケーションをサーバ側で集中管理しており、クライアントPCからのリクエストに応じてデータを配信している。