さまざまなフォーマットの“標準化”が、どのように進められているのかは、あまり知られていない。本特集「標準化プロセスの現場から」では、ITジャーナリストの海上忍氏が、数々の標準化プロセスに携わった国際大学フェローの村田真氏に、標準化の実情に関する話を聞いている。(編集部)
標準化の国際的な現場とは
(第1回「出席者が居眠りしていても標準化される規格」の続き)
海上:標準化の話から逸れてしまいますが、台湾では大陸側の電子書籍に関する動きを気にかけているのですか?
村田:私の知るかぎりですが、CMEXとIIIという2つの団体がいわば内戦状態にあります。争点は繁体字や簡体字といった技術的なものではない……ということから察していただければ、と(笑)
(ここで村田さんに電話が入り中断)
村田:いま、札幌の会議の場所を押さえようとしているんですよ。8月3日と4日に開催するEPUBの世界言語対応について話し合う“CJK”と呼ばれている集まりですね。最初は東京にしようと考えていたのですが、韓国のメンバーが「暑いからイヤだ」と(笑) 映画のロケ地として有名だったりして、札幌は向こうの方に人気ですからね。
海上:そういった会場の手配まで、村田さんがなさるのですか? 活動の経費をどこが負担するかといった金銭的なことも含め、気になるのですが。
村田:会場の手配にかぎらず、すべて私がやってますよ。参加者への連絡から発表の依頼まで。経費ですが、最初EPUBの件を引き受けるとき、多少の金額はJEPAから受け取りましたが、先日韓国で行われたCJKワークショップの初会合で、自分を含む3名分の旅費を捻出しまして。まだ少しは残っていますが……これからどうするんでしょうね。
海上:はっきりとした活動費の裏付けがない状態なのですか?それは、ほとんどボランティアであるような……
村田:私は他からの収入がありますから、なんとかやっていけます。しかし、他の方々は台所事情が厳しいかもしれません。
海上:皆さんがなさっていることは、日本の将来における出版文化とか、ひいては国益にも影響するわけですよね。公的な補助を受ける道筋はないのでしょうか?
村田:ISO/IECのような国単位による組織の場合、国内に委員会が設けられ投票は国単位となるため、公的な補助を受ける余地もあるのでしょうが……W3CやIDPFはそうではありません。企業や個人単位での参加ですから、国や公共団体による支援を受けるというのはとても難しいのですよ。日本で委員会を設立してEPUB標準化に取り組もうと主張しても、おそらく無視されるでしょうね。
逆にいうと、公的な支援を受けた委員会による活動も、個人レベルでの動きも、結果で見れば平等です。私の現在の立場(EPUB 2.1世界言語対応のリーダー)でいうと、もし急にIDPF公式会議で日本の公的な委員会がなにか発言することがあったとしても、思いつきの発言と同じ扱いをします。標準化の国際的な現場とは、そういうものです。
海上:では、日本はどのようにEPUBの標準化に関わっていけばいいのでしょうか?