本特集「標準化プロセスの現場から」では、ITジャーナリストの海上忍氏が、数々の標準化プロセスに携わった国際大学フェローの村田真氏に、標準化の実情に関する話を聞く。本稿は第1回「出席者が居眠りしていても標準化される規格」、第2回「標準化の国際的な現場とは」に続くインタビュー。(編集部)
“標準化”の現場で日本のプレゼンスは低下傾向に
海上:村田さんが活動されているXML関連の分野において、今後日本の置かれる立場はどうなると見通されますか?
村田:ひとつ確実に言えることは、国際間での標準化作業における日本のプレゼンスは低下傾向にあるということです。しかし、その一方で韓国や台湾、中国といったアジアの国々が存在感を増しつつある。私の目が黒いうちは、私が得意とするXML方面はまだ大丈夫だと信じたいのですが……あと10年もすれば、はっきりとした形で“抜かれる”と思いますね。
海上:そうなりつつある原因や要因について、どうお考えですか?
村田:まず、担当者の高齢化が進行していることが1点。こういった標準化の現場で、30代のエースはいませんからね。
海上:標準化プロセスに関与するための条件というものはありますか? その分野での知識はもちろん、英語とか交渉力とか……
村田:いやいや、そんなことはありませんよ。もちろん、そういった能力があるに越したことはないでしょうが、むしろ後から付いてくるものだと考えています。人材育成の必要性と捉えてしまうと、現在の日本企業では無理でしょう。
海上:村田さんはどのようなバックグラウンドを持ってXMLの標準化を進めていたのでしょうか?
村田:当時、私は富士ゼロックスに勤務していまして、会社からのサポートがありました。その頃は企業としてXMLに取り組んでいるというと、宣伝になりましたからね。XMLの勃興期で、多くの人たちが富士ゼロックスのウェブサイトにアクセスするという背景がありましたので、比較的取り組みやすかったということはあります。だからこそ、標準化のエキスパートとして企業をドロップアウトできたのかもしれません。企業で普通に過ごしていては、難しいと思います。