NECは9月30日、理想科学工業(理想科学)に対し、設計プロセス改革を目的とした「新・開発支援システム」を納入したことを発表した。同システムは8月より稼動を開始している。
高速カラープリンタやデジタル印刷機の開発、製造、販売を主力事業とする理想科学では、製品開発においては、SolidWorksが開発しNECが提供している3次元CAD「SolidWorks」やBOM(製品構成情報)をベースにした全社PLM(Product Lifecycle Management)システム「Obbligato II」を核とした開発支援システムなどを早くから導入していたという。
しかし、既存システムの利用において、設計部門の3次元CADシステムと全社で設計情報を共有するためのPLMシステムを別々に運用していたため、設計者が3次元CADで作成したBOMをPLMシステム上に改めて登録しなければならず、設計者の負担が増えるなど、更なる効率化を目指す上で課題があったという。また、顧客ニーズの多様化に応える製品を提供するために開発スピードの向上が一層重要になることからも、理想科学では設計業務の更なる効率化が急務だったとしている。
新・開発支援システムでは、設計情報の管理基盤として、設計部門専用の3次元データ管理システム(PDMシステム)と全社PLMシステムの2つを導入し、3次元設計データが「正式データ」となるように連携させ、3次元設計を最大限に活かせる効率的な設計フローを実現したとしている。
設計部門専用には、3次元CADの仕掛りデータの管理や流用設計がしやすい「SolidWorks Enterprise PDM」を利用。「正式データ」の所在やBOMの管理を行う全社PLMシステムにはNECの「Obbligato II」を利用した。SolidWorks Enterprise PDMは、3次元CADと同じSolidWorks製であるため、両システムの親和性が高い。そのため、CADのバージョンアップに伴うデータ管理システムの変更対応負荷をSolidWorks Enterprise PDMが吸収でき、全社PLMシステムへの影響を最小限にして、メンテナンス工数を大幅に軽減できるという。
また、3次元CADで作成したBOM情報を取り込んで統合管理することにより、BOMをベースにした全社での一気通貫なシステムを実現したという。仕掛り段階の早期から、全社レベルでBOM情報を共有することが可能となり、設計業務の手戻りを防止。また、正式データや関連するデータを正確、迅速、簡単に確認できるため、検索作業の効率化が図れるという。さらに、設計変更の際には、3次元設計は3次元CAD側から設計変更処理を行い、3次元CADを使用しない場合は全社PLMシステム側から設計変更処理を進められるように工夫した。これにより、3次元設計における設計変更の確実性と、3次元以外の設計における利便性を両立させたとしている。
さらに同システムでは、使い勝手を重視し、設計者のシステム活用を促進する工夫も行ったという。3次元CADから情報登録の専用画面を起動してBOM、部品情報、図面の登録を行うなどの形で操作性を向上。同時に、設計部門用PDMシステムと全社PLMシステムの両方へ一度に製品情報を登録できるため、作業の効率化を実現したとしている。設計視点の使い勝手を重視して外部プログラムの作り込みを行ったことで、設計者のシステム活用を促進できるという。