日本企業のグローバル化に伴い、日本のITベンダーにビジネスチャンスが増加している…と思いたいところだが、実態はそうでもないようだ。矢野経済研究所が11月2日に発表した調査結果で明らかになった。
年商100億円以上で海外拠点を持つ日本企業18社にヒアリングしたところ、海外拠点でのシステム導入や機器の購入で日系ITベンダーを積極的に利用している企業は3社、そのほかは現地のITベンダーを利用していると回答。今回の調査対象企業は、メインのITベンダーと海外拠点では取引していないという。
海外でのIT利活用は現地に一任している企業が多く、現地採用のIT担当者との付き合いやすさや価格の安さ、現地の法律や商習慣に詳しいなどの理由から、現地ITベンダーが選ばれているという。日系ITベンダーについては「グローバル対応という観点では力が弱い」「コストが高いため積極的に協業する機会は少ない」という意見があるとしている。
年商100億円以上で海外拠点を持つ日本企業212社へのアンケートでも、日系ITベンダーを利用している割合は26.9%、現地ITベンダー63.7%と2倍以上の差がついている(図)。こうしたことから矢野経済は、海外で日系ITベンダーの存在感は小さいと分析している。
日本企業は現在、グローバルでの全体最適やガバナンス強化を狙ったIT投資を増やしつつあると言われている。今回のヒアリング対象企業18社中10社がそうした理由で海外の基幹システムを見直し、あるいは検討を進めているという。
基幹システムの見直しは、ほとんどが日本本社主導のプロジェクトとなるため、日本とのコミュニケーションが円滑で、コントロールしやすく、品質や信頼性の面でも評価が高い日系ITベンダーが優先される傾向があるとしている。だが、海外で事業を展開している日系ITベンダーは少ないことから、企業の選択肢は限られているという。
日本国内の経済停滞や事業環境の変化から、ユーザー企業は海外進出を加速しており、IT投資も国内よりも海外で増加する傾向が見られると同社は説明。日本のITベンダーは、海外でのIT投資ニーズを獲得するために、サービス提供力や価格対応力などの課題に対処して、米国やインドのITベンダーなど、海外経験の豊かな競合に対応する必要があると提言している。