「日本の製造業は新たな製品カテゴリの創造に力を注ぐべき」
製造業向けにCADや情報共有の仕組みを提供するPLMソフトウェア大手、シーメンスPLMソフトウェアのチャック・グラインドスタッフCEOはこのように指摘する。「携帯電話」「カメラ」といった従来型のカテゴリー定義にとらわれず、「イノベーション」を守り続けることが必要という。
「自動車、洗剤、潜水艦などものをつくる会社にずっといて、すばらしいキャリアを積んできた」と話すグラインドスタッフCEO。1つ1つの質問に丁寧に答えてくれた。
シーメンスPLMは、自動車をはじめとした製造業に多くのユーザーを持つPLMの最大手。トヨタ自動車、GM、Fordをはじめ、Apple、Microsoft、Intelなども同社のソフトウェアを利用している。グラインドスタッフCEOは「(ダッソーシステムズの)CatiaのユーザーだったChryslerとDaimlerがともにわれわれのソフトウェアに乗り換えた」と話す。
同氏はiPhoneを引き合いに出し「通話、カメラなど従来型のさまざまな製品カテゴリから機能が集まり、新たな製品カテゴリが生まれた」と説明。携帯電話がPCに取って代わる可能性があることなどを例に出しながら、既存のカテゴリへの執着が危険であると指摘した。
「日本の製造業にとって、これからもイノベーションのエンジンを止めないことが何よりも大切だ」(同氏)
イノベーションを維持し続けるための仕組みも
グラインドスタッフCEOは、イノベーションを維持するための1つの方法として、ソーシャルネットワークの仕組みに注目しているという。「FacebookやTwitterなどに集まる膨大な情報を利用できるのは大きい」と話す。
自動車の設計にもSNSの情報を活用できるという。「車内に設置するカップホルダーの位置を、SNSの書き込みを分析して決める」(同氏)といった使い方は想像しやすい。
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だがSNSを使うことで、従来とはまったく異なる考え方で製品のアイデアを得る方法もあるという。自社の製品デザイン部門の担当者などを前提にしないような方法を一例に挙げた。
「社内に限らずに世界から集めた50人から新車のアイデアを集め、そのうちの1人のものを採用する」といった方法だ。
これにより、従来なら出てこなかったような斬新なデザインアイデアが生まれてくるという。その意味で「SNSは面白い」と笑顔を見せる。
グラインドスタッフCEOは「新たなカテゴリの創造が大切、といったことはほとんどの日本企業が気づいていることだろう」と加えた。だが、従来のカテゴリ意識を捨て、ゼロベースで新たな製品を作り出すには技術面、組織面、人材面などさまざまな観点からの工夫が求められるため、口で言うほど簡単なことではなさそうだ。