企業所有端末の社外向け活用では「専用端末の代替」が有効
次に「企業所有の端末を社外向けに活用する」(冒頭の図の右上)場合を考えてみよう。比較的多く見られるのは保険会社の営業担当が顧客に見せるパンフレットや説明書類などをタブレットに格納して持ち歩くといった「ペーパレス化」の例だ。ただし、これを実践するにはドキュメント類を電子化する必要がある。更新に伴う販管理も欠かせない。そのため導入効果を得るにはある程度の企業規模が必要となってくる。実際、こうした活用法が見られるのは中堅の上位企業や大企業が主体だ。
では大企業だけでなく、中堅・中小も含めた多くの企業が実践できる「企業所有端末の社外向け活用」はないのだろうか?ここで注目すべきなのが「専用端末の代替」である。POSレジやオーダリングシステムなど企業が顧客と接する業務場面においては様々な専用端末が利用されている。これらをスマートデバイスで代替するわけだ。例えばPOSレジの場合、アプリケーションが追加できる点を活かせばeコマースサイトとの連携も可能だ。携帯性を活かせば、屋外イベント参加時にもポイント付与など店舗内と変わらない特典を提供できる。しかも、こうした活用シーンの拡大は導入を開始した後でも行える。
そうなると、企業側にも発想の転換が必要だ。これまでは「中長期的に変わらないビジネスモデルを構築し、それを実現する恒久的なシステムを導入する」という考え方だった。だが、今後は「常に変化するという前提で、自社のビジネスモデルとそれを実現するシステムの構築/改善を短いサイクルで繰り返す」ことが求められてくる。
「スマートフォンによる専用端末の代替」は単に企業にコスト削減効果をもたらすだけではなく、ビジネスの進め方そのものにも影響を与える可能性があるという点に留意しておくべきだろう。