インメモリキャッシュで並列にトランザクション処理する「ULFIRE」は何を狙うのか

田中好伸 (編集部)

2012-07-20 10:45

 スケールアップかスケールアウトか――。システムをいかにスケールさせるか。つまりはシステムの性能をいかに拡張させるか。この視点でよく議論されるのがスケールアップかスケールアウトかという議論だ。

 ただ、スケールアップかスケールアウトかという選択肢は必ずしも二者択一の関係にあるわけではなく、システムがどんなデータをどう処理すべきかという点で補完関係にある。例えばオンライントランザクション処理(OLTP)はデータの一貫性が求められることからスケールアップの方が向いていると言われるし、大量のアクセスをさばかなければならないウェブサーバではスケールアウトの方が向いている。

 スケールアウトのメリットは、何よりも処理ノードを追加すればするほど処理性能がリニアに伸びるということだ。しかも処理ノードであるIAサーバは低価格に導入できる。そうした点で注目を集めているのが、ビッグデータの分析に向いていると言われる分散並列処理フレームワークの「Apache Hadoop」だ。このHadoopを企業の基幹系システムのバッチ処理フレームワークとしたのが「Asakusa Framework」になる。

 スケールアップかスケールアウトかという議論の大本にあるのが、ハードディスク(HDD)が中心となるリレーショナルデータベース(RDBMS)での課題だ。RDBMSは大量のOLTPには向いていて、障害が起きた時の信頼性も高いというメリットは誰もが納得する。だが、多数のクライアントからの同時接続にはなかなか力が発揮できず、さまざまな大容量のデータリソース、つまりビッグデータには向いていないとも指摘されている。

 もちろんRDBMSでもスケールアウトできるような技術が導入されているが、処理ノードを追加する度に、例えばデータベースの分割作業が必要となることから運用負荷が高いとされている。

 だったら、メモリにキャッシュするインメモリキャッシュでパフォーマンスを上げましょうという動きも出てきている。メモリにアクセスするので、高速なアクセスができるからだ。

 ただ、このインメモリキャッシュを基盤にしたシステムは、障害が起きた時の信頼性がRDBMSと比べて格段に落ちる。インメモリキャッシュでのOLTPの並列処理性能はやはりRDBMSほどの性能が出ないために、データが頻繁に更新されるような処理にはそれほど向いていないと言われている。サーバを複数台並列にしてメモリにデータのキャッシュを置くだけでは、基幹系システムの必須であるトランザクション処理に不向きというわけだ。

 スケールアウト可能、つまり処理ノードを増やした分だけ性能が上がるとともにメモリで高速に処理する。加えて信頼性も確保しようということを狙っているのがウルシステムズだ。同社はこの7月から、ヴイエムウェアが提供する分散キャッシュソフトウェア「VMware vFabric GemFire」を中核エンジンにしたデータグリッドフレームワーク「ULFIRE」の提供を開始している。

 ULFIREは、大量のトランザクション処理で頻繁にデータが更新されるミッションクリティカルな業務、つまりは基幹業務系システムで活用されることが中心テーマだ。クライアントからの処理要求が急激に増加しても、処理サーバを拡張すれば動的に処理を分散することができる。

図1 ULFIREのシステム構成
※クリックすると拡大画像が見られます

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