処理するサーバに障害が発生しても、自動的に別のサーバに処理を引き継ぐ仕組みを取ることで信頼性を確保する。vFabric GemFireが中核エンジンであり、データの一貫性を保持した仮想メモリキャッシュで処理は高速になる。大量のデータに対しても、インメモリとバックエンドのデータストアを仮想的に統合することで、透過的にデータにアクセスできる仕組みともなっている。
このULFIREの仕組みは、ある金融機関からの要請に応えた結果だと、同社の桜井賢一氏(プロフェッショナルサービス第3本部第2部部長)が説明する。この金融機関では、数万件の銘柄情報と、リアルタイムに更新される金利データからリアルタイムに債券の時価を計算するシステムを稼働させていた。
利用ユーザー数は数百名と大きく、15時に金融証券市場が終了すると同時にアクセスが集中する。しかも計算対象の銘柄数と利用ユーザー数は確実に増加することも見込まれていたという。「マスタデータも膨大で、トランザクション件数も膨大」(桜井氏)というシステムだ。
現行のシステムは一括計算処理に30分かかっていたという。それにULFIREで3台のサーバに分散処理させることで10秒以内に処理が完了することに成功している。処理性能を見ると、1秒間10件だったのが1秒間2000件にまで向上している。200倍の性能向上になる。
30分かかっていた一括計算が10秒以内に完了することで、業務も効率化されることになり、年間の運用コストは20%以上の削減が見込まれている。今後のユーザー数や銘柄数の増加には、マシンを追加することで対応可能という。
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このULFIREは、企業が現在使用しているアプリケーションに対応することが前提だ。処理ロジックをULFIRE上に配置することで、並列でトランザクション処理を高速に展開できると桜井氏はメリットを強調している。
ウルシステムズは、ULFIREの適用領域として、先の事例にもあるように金融機関での株価や金利を使用したリアルタイム計算処理のほかに、売買情報のマッチングエンジンを想定している。通信業では、通話記録管理や料金計算、鉄道や航空のチケット予約システムや運行情報管理、流通業での電子データ交換(EDI)などの電子受発注系システムや在庫管理システムなどでも適用できると考えている。
いずれも各業界でのミッションクリティカルなシステムばかりだ。こうしたシステムは信頼性が第一であり、数は少なくなってきたとは言え、現在もメインフレームで稼働しているかもしれない。
メインフレームではないかもしれないが、やはり信頼性が何よりも大事であることを考えると、ハイエンドサーバで稼働している可能性が高い。ハイエンドサーバのスケールアップでこれまで対応してきたが、さすがに運用コストの高さにそろそろ限界と感じているユーザー企業もいると容易に想像できる。
スケールアウトで性能を向上させられるULFIREは、そうしたユーザー企業には朗報となる可能性を秘めている。