シャープは、国内の社員を中心に約5000人の人員削減を行うことを発表した。
現在、5万6756人いる総社員を、2013年3月末までに約5万1700人とする計画だ。
シャープの奥田隆司社長は、「シャープには、在庫、設備、人という3つの課題があり、このままでは業績回復にはつながらない。一刻の猶予も許されない経営状況にあり、できる限り早く踏み込んだ構造改革に取り組むことで、次のシャープの成長につなげる」とする。
5000人の人員削減のうち、自然減で数百人、1300人は配置転換などによるものと説明。逆算すると、残りの3000人以上が希望退職によるものになりそうだ。
「前例のない構造改革を進め、業績の回復に取り組む」と奥田社長は繰り返す。
反復する歴史
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シャープが希望退職制度を実施するのは、1950年以来、62年ぶりのことになる。しかし、当時は労働組合側が自主的に希望退職者を募り、会社側に提案するという異例の措置が取られた。
つまり、経営側の意思によって希望退職を実施するのは、今年創業100周年を迎えるシャープにとって、事実上初めてのこととなる。
創業者であり、1950年当時に社長を務めていた早川徳次氏は、このときのことを「生涯最大の危機」と生前に表現していた。そして「最初で最後の人員削減」であることも肝に銘じていたという。
1950年のことの発端は、戦後復興期の「ドッジライン(緊縮財政措置)」による大不況の影響であった。
ドッジラインの影響によってデフレ気配が強まるなか、個人消費が低迷。シャープをはじめとするラジオメーカーが林立し、約80社がしのぎを削るなかで、各社が売り上げの回復や在庫処分を目的とした乱売を開始。さらには、民間ラジオ放送局による放送開始を前に、旧モデルではこの放送が聞けないという情報が流れ、大量の売れ残りや返品が発生するという事態が発生していたのだ。
1949年には月産8万700台だったラジオの生産量は、1950年には月産1万8000台にまで落ち込んだのだ。
これは、今のシャープが置かれた立場に酷似している。