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三国大洋のスクラップブック

スクウェアが狙う商取引のルネサンス - (page 2)

三国大洋

2012-08-17 19:20

 「スクウェアが何でないか」という点については、次のような事柄がまず思い浮かぶ。


1. クレジットカード会社に取って代わろうとしているわけではない

スクウェアはビザ(Visa)のインフラを利用して決済を処理し、同社に手数料を支払っている。この関係から、ビザからも出資を受けている。ゆえに、ペイパルなどのような形(ただし、クレジットカードの口座ではなく銀行口座を入出金に利用した場合)で、既存のクレジットカードに取って代わる可能性はほぼない。また、今のところはカード発行者(銀行など与信管理が必要となる役割)になる可能性も挙がっていない。

2. 手数料収入が儲けの柱にはならない

スクウェアがマーチャントから得る手数料は一律2.75%で、他社のサービスより弱冠低めに押さえられているが、それでもビザへの支払いがあるので、年間取り扱い金額が55億〜60億ドルの規模に達した今でさえ、手元に残る金額はたいしたものではない。

もっとも、スターバックスとの提携が実行に移されると、スクウェアは米国内のスターバックス店舗で使われたクレジットカードとデビットカードの決済をすべて手がけるようになるというから、金額にすれば相当な額が同社を通過することになるのは間違いのないところだろう。それでも手元に残る正味はといえば、決してボロ儲けというわけにもいかないはずだ(註5)。

「じゃあ、どうやって儲けようとしているのか」「どういう点が評価されて32億ドル以上もの価値があるとされるのか」という部分が気になるが、今のところ具体的なマネタイズのプランは公にはなっていないようだ(後に触れるとおり、ヒントはいくつか出ている)。

 今のところは、マーチャント側のインストールベースを拡大し、同時にアプリの利用者を増やすことに重点を置いていて、マネタイズの方法は後で考える、という段階といえるかもしれない。その点ではジャック・ドーシーという名前を世に知らしめたTwitterとほぼ同じやり方をしているようにも見える。

3. 物理的なカード決済はもはや主眼ではない

スクウェアの「ドングル」 スクウェアの「ドングル」(提供:Square)
※クリックで拡大画像を表示

スクウェアというと、サービス開始とともに発表した「ドングル」——iPhoneのヘッドフォン端子に差して使うクレジットカード読み取り装置の印象が強い。Bloomberg Westのビデオでも、あのドングルにカードを通して、画面上にサインする利用者の姿が出てきたりする。しかし、スタバとの提携の中心が「ペイ・ウィズ・スクウェア」(旧Card Case)というアプリを使ったものである点からも推察できる通り、スクウェアの現在の取り組みの中心は、スマートフォンをベースにした電子決済(非接触型)にほぼ移っているように見える。

スターバックスでは、まず顧客のスマートフォンの画面に表示された情報をバーコードで読み取る形で対応していくらしい。すでに自社店舗で導入しているレジや、自社発行のハウスカード/デビットカード(アプリ版を含む)などがあるから、いきなりiPadを新たに大量購入して「スクウェア・レジスター」というマーチャント向けアプリを導入、ということにはならないのだろう。

この「スクウェア・レジスター」を実際に導入したカフェの事例が、Fortuneに7月上旬に掲載された「現金がなくなる」というタイトルの記事の冒頭に出ていた。その記事によると、顧客は店のカウンターで欲しいものを注文し、「(自分の名前)に請求して」(Charge it to __)というだけでよく、あとはカフェ側のスタッフがiPadに表示された顔写真入りの身元情報などを見てOKすれば、支払い決済が成立。顧客のスマートフォンアプリに取引完了を知らせるレシートが送られてくる、という仕組みになっているという(註6)。

また、ドーシーに密着取材して書いた長い記事(註7)を6月に公開したジャーナリストのスティーブン・レヴィは、今回の発表に関連して「両社の提携で比較的簡単に実現しそうなシナリオ」の一つとして、次のように記している(註8)。

ある暑い日に通りを歩いていると、ワンブロック先にあるスターバックスの店舗から、自分の好きな冷たいドリンク(たとえばベンティサイズのアイス・スキニーラテとか)を「1ドル割引でご提供しますがどうですか」というメッセージが送られてくる。このオファーにイエスの返事をして、ついでに「アーモンド・ビスコッティも付けて」といったことが二、三度ボタンを押すだけで可能になる。さらに、店舗の中に足を踏み入れた時には、注文した品がすべて揃っている——品物が入った袋を受け取ってバリスタが決済すれば、そのままテイクアウトできる。

——スクウェアの仕組みが導入されていれば、顧客はもうポケットやバッグの中からスマホを取り出す必要さえなくなる、ということらしい。(次ページ「狙いは「21世紀版の顔パス」」)

Introducing Rewards(Squareのポイントサービスはこんな感じに)
註5:ボロ儲けにはならなそう

スターバックスの昨年度の売上は世界合計で約117億ドル。

Starbucks Corp. - WSJ

ざっくりこの半分が米国内のものだとすると60億ドル。そのすべてがカード決済だったとして、これに2.75%をかけると1億6500万ドル。さらにそこからビザへの支払い分を引き、販管費を引いて……となると、一体いくら残るものなのか。なお、現在の社員数は250〜300人ということなので、一人あたり10万ドルの年俸で皮算用すると、人件費だけで2500万ドル〜くらいかかる計算になる。


註6:「現金がなくなる」(Fortune誌)

And yet when I walked in for the first time, I immediately felt like one of the regulars. "Charge it to Miguel," I told the barista after ordering a cappuccino, and charge it he did -- to my phone. Not that I ever pulled my iPhone from my pocket. Seconds after the barista tapped my order on Grumpy's minimalist register -- an iPad mounted on a stylish countertop stand -- my phone vibrated in my coat pocket, signaling that our transaction was complete. I couldn't wait to check that everything had worked as promised. (It had.)

The Death of Cash - Fortune


註7:スティーブン・レヴィの密着レポート

The Many Sides of Jack Dorsey - Wired.com


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