データセンターの省エネ度合いを表す指標としては、米国で発足したグリーン・グリッドが提唱したPUEが広く定着しています。
PUEの定義は判り易く、データセンターでIT機器に消費される電力を1として、それ以外の設備などで消費される電力・損失を足したものです。IT機器の消費電力が一定の場合には、データセンター内の冷却装置など、設備側の消費エネルギーを削減すれば、PUEが1に近づいて省エネが向上しているという評価ができます。
ところが、仮想化などでサーバ等のIT機器の省エネを進める一方、これに対応した設備側の省エネを実施しなければ、せっかくデータセンター全体としての省エネが進んでも、評価指標であるPUEは悪化する、という矛盾が発生します。例えば、PUE=1.7のデータセンターで、サーバの消費電力量(=発熱量)が50%低減されたとしても、サーバ以外の消費電力が減らなければ、PUE=2.4になり、データセンター全体の消費電力は30%削減されるだけになります(図1)。
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これは、物理的にはデータセンター内に冷やしすぎの場所が発生したり、冷却風量が多すぎたりしていることを示しています。逆に、送風機のファン風量をIT機器の省エネ分以上に低下させるなど、設備側の省エネを過度に進めると、データセンター内にホットスポットが発生してしまいます。
これに対応するためには、PUEの「スケーラビリティ」という考え方を取り入れる必要があります。
理想的には、IT機器の消費電力が減少する時に、データセンターの設備の消費電力・損失もそれに比例して減少するべきで、この場合にはIT機器の消費電力にかかわらず、PUEは一定の値になります。実際のデータセンターで、IT機器の消費電力の変動に対してデータセンター全体の消費電力をプロットすると、図2のようになります。グリーン・グリッドでは、このようにプロットした点の直線近似の傾きと、原点を通る理想的なPUEの比を「PUEスケーラビリティ」と定義しています。PUEスケーラビリティが100%に近づくほど、IT機器の消費電力が減った場合に設備の電力も小さくなる、「理想的なデータセンター」に近いことを示します。
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次回は、データセンターのIT機器と設備の省エネを進める場合に必須の「データセンターの見える化」について解説します。
参考資料:
グリーン・グリッド ホワイトペーパー
#20 PUE拡張性スケーラビリティ指標および統計分析
シュナイダーエレクトリック株式会社 ホワイトペーパー
#43 データセンタとサーバルームの動的な電力変動
著者紹介:
シュナイダーエレクトリック株式会社 取締役 佐志田伸夫
技術士(電気電子部門)