日本IBM、新メインフレーム「zEC12」--処理能力1.5倍、スパコン技術を実装

大川淳

2012-08-30 11:33

 日本IBMは8月29日、メインフレームの新製品「IBM zEnterprise EC12(zEC12)」を発表した。同日から販売を開始、9月20日から出荷する。価格は最小構成で1億円程度から。

 zEC12は、動作周波数が5.5GHzで業界最速というプロセッサを搭載し、これまでの「IBM zEnterprise 196(z196)」と比べ、コアあたりの処理速度が25%、筐体あたりの命令処理能力は50%向上しているという。国産メインフレームからの置き換え、既存のLinuxサーバの最適化や統合を望む企業の需要に応えていく意向で、今後1年間に25~30台程度の販売を見込んでいる。

 zEC12のプロセッサは、32nmプロセスで製造され、性能が世界最高レベルというマイクロプロセッサを120個搭載。z196と比べ、動作周波数は5.2GHzから5.5GHzへ約5.7%向上、1秒間あたりの命令処理数は520億回から780億回(78BIPS:Billion Instructions Per Second)へと約1.5倍になり、1筐体あたりに搭載できるプロセッサコア数は96個から120個へと1.25倍に増加。ラジエータによる新たな冷却方式を取り入れているほか、天井配線を可能になるなど設備計画を柔軟にするオプションもそろえている。

 競争力強化のため企業は、事業活動に関わる膨大なデータを活かし、それらの情報から、洞察や知見を引き出し、迅速な意思決定をしていくことが重要となる。一方、運用管理の負荷やコスト、セキュリティ対策など、企業は、事業を継続するため、多くの問題を抱えている。

 今回のzEC12は、これらのような課題への対策として、(1)究極のセキュリティと事業継続、(2)規模による効率化、(3)オペレーショナルアナリティクス――の3つを軸として顧客のビジネスを支援することを図っている。

大島啓文氏 大島啓文氏

 システム製品事業 システムz事業部長の大島啓文氏は「この15年間、企業のIT投資額はほぼ横ばいだが、運用管理コストは右肩上がりを続けている。これらへの対策として2010年にzEnterprizeを投入した。今回の製品はさらに性能を強化することで、事業継続への懸念を払拭し、保守関連コストを下げ、その分を競争力強化のための施策に回すことができる」と話す。

 (1)の究極のセキュリティと事業継続の点ではまず、異常メッセージ検知で可用性を向上させるソフトウェアのオプション製品「IBM zAware」を用意する。zAwareは、ハード資源とOS、OS上に搭載するソフトを一元的に管理し、入出力処理やディスク容量など、過去90日間分のログを分析することで、潜在的な問題や障害の予兆を事前検知し、管理者に報告する。

北沢強氏 北沢強氏

 この傾向分析機能で管理の負荷を軽減しながら、障害の未然防止が実現するという。システム製品事業 System z事業部 エバンジェリストの北沢強氏は「従来は、専門家が経験をもとに分析していた知的処理を自動化した」としている。

 オプションであるフラッシュメモリ「FLASH Express」も大きな特徴の一つだ。FLASH Expressは基本的にメモリカードデバイスであり、DRAMよりも安価でハードディスクよりも高速だ。FLASH Expressはメモリとディスクの速度性能に格差があることから引き起こされる入出力処理の遅延を改善できるという。

 従来、メモリの容量を超えた処理はディスクへアクセスし、待ち時間が発生していたが、高速なFLASH Expressをメモリとディスクの間に新たな階層として置くことでパフォーマンスの差を緩和し、システムの入出力処理を効率化する。

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