iPhone 5の発売がいよいよ目前に迫った。
米国では9月19日早朝から大きな影響力を持つとされるジャーナリスト、コラムニスト、ブロガーらのレビューが次々と公開されている。
今回は、『Wall Street Journal(WSJ)』のウォルト・モスバーグ、『New York Times(NYT)』にコラムを連載するデビッド・ポーグ、『Time』のハリー・マクラッケン、TechCrunchのMG・シーグラー、そしてDaring Fireballのジョン・グルーバーのレビューから、各人が示したポイントや見解を紹介したい。
なお、各氏は以前からアップルファンやアップルシンパと見なされている。アップル側からすれば「よい評価が出てきそうな期待が持てる面々」のレビューなので、その前提で読み進めてもらいたい。
大幅な変更、絶妙のバランスで実現
小幅な仕様変更や限定的な新機能の追加に終始した前回(4から4S)とは異なり、今回のアップデート/アップグレードは、それほど迷うことなく評価できる。しかし、レビュアーとしての腕の振るいどころには相当苦労したのではないか——レビュー全体を眺めて、そんな印象を持った。各レビュアーとも一様に高い評価を与えており、欠点の指摘までほぼ同じなのだ。
まず、デザインや仕様に関するポイントについては、どのレビューも異口同音の大絶賛振り。それもそうだろう、画面サイズははっきりと大きくなり、プロセッサも大幅に高速化し、LTE対応でネットワーク接続スピードも圧倒的に速くなり、同時に薄型化と軽量化が進んで、さらにバッテリ駆動時間も犠牲にならず……と、これまでiPhoneを使ってきた人間にとって、評価の際に悩むところが少なかっただろうと思われる。
MG・シーグラーはアプリ開発者に近い視点から、横幅を4Sと同様に保ったままアイコン一列分縦に長くするという変更の利点について、分量を割いて説明している。iPhone 5のような形で画面サイズを大きくすれば、従来からあるアプリの移行もスムーズにいくといった内容だ。
一方、片手操作で「指がキーボード(ソフトウェアキー)の位置を記憶している」というジョン・グルーバーは、「慣れるまでに少し時間がかかりそう」と指摘するなど、評価の微妙な違いも随所にみられる。
とはいえ、「大きいことは良いことだ」と言わんばかりの4.3インチや5インチ端末のように、片手で握ったまま操作することを前提にした選択をアップルが避けたことについては、押し並べて良い評価を下している。また、表示できる情報量が増加した点も評価のポイントになっている。
新しくガラスとアルミのコンビネーションになった本体の質感についても高評価が目立つ。パイパー・ジャフレイのアナリストで、アップルウォッチャーとして知られるジーン・マンスターが先週、この素材変更と薄型・軽量化が相まって、「iPhone 5はiPhone 4Sとはまったくの別物。実際に手にしてみれば、それはすぐに分かるはず」云々と発言していたが、それと相通じる見解が目立つ。
たとえば、MG・シーグラーが「軽量化するといっても、Galaxy Nexusのようにプラスチックをつかったりはしなかった。そのおかげでiPhone 4/4Sと同じくらいしっかりした造りになっている」と書けば、デビッド・ポーグは「普通、大型画面を採用したスマートフォンはポケットに入れるとかさばるものだが、iPhone 5はポケットに入れていることさえ忘れてしまいそう」と記し、またファンボーイの代表格とされるジョン・グルーバーも「この軽さは1週間程度で馴れてしまうものかもしれないが、その時には iPhone 4/4Sがレンガのように思えてしまうだろう」として、「これほどナイスなものは、これまでに手にしたことがない」とまで持ち上げる絶賛振りである。
生前のスティーブ・ジョブズとも個人的親交があったWSJのウォルト・モスバーグも、iPhone 5が「いま手に入るスマートフォンのなかで、iPhone 5はベストな製品」と評して「お奨めの一品」に認定。特に画面の大きさや本体サイズについては、「もっと大きな画面のAndroid端末などよりも使いやすく(特に片手では)、ポケットやバッグに入れての持ち歩きもにも適していて、さらに通話時も不自然さがない」と評している。
ちなみに、グルーバーは実際にベライゾンの小売店頭で見かけた例として、もともと両手使いを前提と考えている御婦人が、「なるべく画面サイズの大きな、できれば5.3インチのGalaxy Noteあたりがいいのだけれど、ベライゾンでは扱っていないからGalaxy S IIIにする」と言っていたというエピソードを紹介している。人によっていろんな捉え方があるのだな、とちょっと感心してしまった。(次ページ「見解が分かれた変更は……?」)