製品開発と経営の「高み」
他社にはなかなかマネできないほど精緻なものを形にすること。そのためには、素材や工法の開発まで自社で主導したり、素材を産出する鉱山をひと山まるごと押さえたり、特殊な製造機械のメーカーの生産能力を独占したりもする。
そしてその形になったものをおそろしく大量に生産し、それを売りさばいていくこと。
この二つの要素を核にした「勝利の方程式」が通じなくなる可能性。
今回の一連の出来事はアップルにとってちょっと怖ろしい可能性を垣間見させたものかもしれない。そんな可能性が、他社からの直接的な攻撃というより、むしろ「自壊」のような形で浮上したという点にはなんとも興味深いものがある。
営利企業であるアップルには、常に高みを目指す責務がある。そして昨今の時価総額からは、同社がすでに前人未踏の領域に接近しつつあるとの印象も受ける。
現実には、スマートフォン市場の規模だけみても全世界で2000億ドル以上(Bloombergが好んで使う数字は2160億ドル)というから、アップルにとってのノビシロがすぐになくなるとも思えない。またスティーブ・ジョブズが失敗の名人であった(=失敗から学ぶことが上手かった)こと、あるいは朝令暮改の達人であったことなどを思い出すと、今のアップルがそう簡単に崩れるとも思われない。たしかに、たとえば10年前と比べれば、何かを失敗したときに支払う代償の大きさは比較にならないほど大きくなっている。だが、その一方には「守る側の強み」とでも言うべきものもあろう……。
そうしたあれやこれやを含めつつ、
「アップルというイカロスがこの先どこまで高く昇っていけるのか」
「iPhone事業というその翼をつなぎとめる蝋が溶け出すことがあるのか」
「あるとすれば、それはいつのことになるのか」
アップルの製品や経営について、そんなことをボンヤリと思い浮かべてしまう今日この頃である。
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