米Citrix Systems主催のイベント「Citrix Synergy 2012」が10月17日、スペイン・バルセロナにて開幕した。初日の基調講演には同社最高経営責任者(CEO)のMark Templeton氏が登場。今年5月に米国で開催したCitrix Synergy 2012 San Franciscoでコンセプトを発表していた「Project Avalon」の最新情報などを説明した。
Project Avalonは、Windowsのアプリケーションやデスクトップをクラウドサービスとしてさまざまなデバイスに提供するというもの。5月のイベントではコンセプトが発表されるのみにとどまっていたが、今回同プロジェクトのより具体的な姿が明らかになった。
Project Avalonの新たなステップとしてTempleton氏が発表したのは「Excalibur」と「Merlin」だ。これらはAvalonのコアになるという。
Excaliburには、サービス管理の簡素化を実現するためFlexCast 2.0技術が採用される。これにより、アプリケーションやデスクトップの管理コンソールは統一される。また、モバイル用途やビデオ閲覧などのニーズに対応するためHDXを刷新。動画圧縮規格「H.264」に対応し、ビデオ再生における高度マルチキャスト機能を提供するほか、携帯電話の3Gネットワーク上でもスムーズな動画再生を実現するという。さらに、エンドユーザー環境をリアルタイムで分析するHDX EdgeSightを用意、サービスを可視化して迅速な問題解決につなげる。
Merlinは、「Citrix CloudPortal」および「Citrix XenApp」の技術をシームレスに統合し、クラウド型のマネジメントとサービスオーケストレーションを実現する。CloudStack上に構築されたMerlinはオープンで、WindowsやWindows Serverの複数バージョン、またXenAppやXenDesktopの複数バージョンなどから好みの環境を選んで同時に走らせることが可能となる。
Excaliburは、11月1日にテクノロジープレビューが提供開始される。Marlinのテクノロジープレビューは、2013年第1四半期に提供開始の予定だ。

Project AvalonのコアとなるExcaliburとMerlin
Project Avalonのほかに今回のイベントで特に注目されたのは、CitrixとCisco Systemsのパートナーシップの拡大だ。これについては続報にてお伝えする。
このところCitrixは、Synergyの開催にあわせて企業買収の発表を行っている。今年5月のイベントではクライアント仮想化の管理ソリューションを提供するVirtual Computerの買収を発表し、2011年10月のイベントではアプリケーションの移行および管理ソリューションを提供するApp-DNAを、そして同年5月には仮想デスクトップインフラのソリューションを提供するKavizaの買収を発表するといった具合だ。

バルセロナの街の風景を写し出したスクリーンを前に基調講演を開始するCitrix SystemsのCEO、Mark Templeton氏
今回のイベントでは特に企業買収の発表はなかったが、Templeton氏は基調講演の冒頭、7月に買収を完了したばかりのBytemobileを紹介した。Bytemobileはモバイル通信事業者向けにデータやビデオの最適化ソリューションを提供しており、60カ国で130の通信事業者にサービスを提供。その契約者数は20億にも上り、日々20Pバイトものデータを処理しているという。
Templeton氏は、「4GやLTEなどの新たな通信技術が登場し、データ通信量はますます増加している。だがその一方で、通信事業者の収益はあまり伸びておらず、データ通信量の増加率との差は開くばかりだ。この差を少しでも縮小させるためのソリューションをBytemobileが提供する」と述べた。