シトリックス・システムズ・ジャパンは、5月9日〜11日までの3日間、米サンフランシスコで開催したプライベートイベント「Citrix Synergy 2012」で発表された内容について、日本の報道関係者を対象に説明会を開催した。
同社マーケティング本部 本部長の伊藤利昭氏は、「Citrix Synergy 2012には6300人が来場。モバイルワークスタイルを進めていくための支援と、俊敏性とコスト削減を実現し、統合したサービスを提供するクラウドサービスにおいて、当社から具体的なソリューションを紹介する場になった」と語った。
同社では、時間と場所の制約を受けずに、社員が私物デバイスを利用しながら安全に業務を続ることで生産性を高める「モバイルワークスタイル」と、プライベートクラウドとパブリッククラウドをシームレスに連携する「クラウドサービス」の2つの分野に対して注力する方針を打ち出している。
Citrix Synergy 2012では、モバイルワークスタイルとクラウドサービスに関する新たな製品が相次いで発表された。
モバイルワークスタイルでは「People」「Data」「Apps」「Devices」という観点から発表された製品などについて説明した。
Peopleの観点では、日本ではまだ投入されていない製品であるが、ビデオ会議サービスの「GoToMeeting」において、新たに「GoToMeeting HD Faces for iPad」を発表。カメラが付属するiPadによって、これまでPCで行っていたビデオ会議を、iPadを持ち運んで利用する環境を提案できるようになるとした。また、無料でダウンロードできる「GoToAssist for Android and iPad」は、iPadを活用することで様々な企業がユーザーへの直接サポートを行えるような環境が実現できると語った。
さらに、今年2件目の買収となり、Synergy 2012の会場でも話題となったサービス「Podio」については、ソーシャルを活用したチームコラボレーションを展開できるようになると位置づけ、「社員同士だけでなく、顧客やパートナーとのコラボレーションが可能になる。シトッリクスの仮想デスクトップとの連携も可能になる。5ユーザーまでは無料で利用できる」(伊藤氏)などと、そのメリットを強調した。
データという観点では「ShareFile」について説明した。ShareFileはSynergy 2011で買収を発表したもので、セキュアな環境であらゆるファイルを、あらゆるデバイスで誰とでも即座に共有できるサービスだ。今回のSynergyにおいては、新たな製品として「ShareFile with StorageZones」を発表。これにより、データの重要度に応じて保管するストレージの場所を選択でき、ユーザーの利用環境に応じてパフォーマンスとコンプライアンスを最適化することができる。
また、「Citrix Receiver with Follow-Me Data」は、ReceiverとShareFileを組み合わせたもので、あらゆるドキュメントの閲覧、編集、保存、共有が可能になり、リモートワイプにも対応しているという。
一方、アプリケーションでは、エンタープライズ用途においても数百万種類のアプリケーションへの対応が求められており、異なる種類のアプリケーションをシンプルな操作で活用することが求めらているほか、管理者にとってはアクセス管理などが求められていることを指摘。これを解決するのが「Citrix Cloud Gateway」になるという。
「今回発表したCitrix CloudGateway 2は、モバイル、ウェブ、SaaS、Windowsアプリケーションに対応したユニファィド・ストア・フロントとなり、HTML5、iOS、Androidにネイティブな対応が可能となる。アクセスポリシー制御やシングルサインオン、リモートワイプなどの機能を、モバイルデバイス向けに実現することができる」(同社プロダクトマーケティング シニアプロダクトマーケティングマネージャーの的場謙一郎氏)という。Citrix Cloud Gateway 2は7月の出荷を予定している。
4月から日本での出荷を開始している「Citrix VDI-in-a-Box」については、機能強化が発表された。XenDesktopへのライセンス移行パスなどを用意しており、「VDI-in-a-Boxにより少ない投資コストで小さく始めてもらい、順次、XenDesktopへと拡大をはかれるようなパスを今回のSynergyで発表した。さらに、より完全なVDIの提供に向けて、これまでのプール型に留まらず、ユーザー固有環境をパーソナルVDIとして提供。これまで以上に幅広いユーザー層や市場に対して提供できるようにする」(同社マーケティング本部プロダクトマーケティング シニアマネージャーの竹内裕治氏)という。
XenDesktopについては、フォーチュン100社のうち80%が採用していること、1万ライセンスを超える顧客が100社以上になっていることを示す一方、新たに「XenDesktop with Remote PC technology」を追加したことを紹介。「新たなFlexCast配信オプションとして提供するものであり、短時間でVDIのすべての利点をユーザーに対して提供する。サーバやストレージなどの追加コストを必要とせず、手間がかからずにクイックイセットアップができる。あらゆるデバイスからそのままオフィスにあるPCへリモートアクセスできる。PC持ち出し禁止というポリシーに縛られているユーザーを開放することができるだろう」(竹内氏)と語った。
HDXに関しては、「HDX 3D Pro」において、ディープコンプレッションCODECを追加することで帯域負荷を50%低減。3D CADのような負荷が高いグラフィックスを仮想化環境でも利用できるようになるという。「ディープコンプレッションCODECは、次のステージに向けた重要なマイルストーンになる」と位置づけた。
また「Universal Print Server」によって、プリントサーバ機能を独立させた。プリントジョブの効率化と最適化を実現し、デバイスを選ばず仮想デスクトップセッションから直接印刷できるようにした。
さらにユニファィドコミュニケーションへの対応では、「Cisco VXI Unified Communications」や「Micrsoft Lync 2010」を最適化する機能を、次期XenDesktopに同梱して提供することを明らかにした。
デバイスに関しては、さまざまなデバイスからビジネスアプリケーションへのアクセスを可能とするCitrix Receiverとともに、N Computingをはじめとするメーカーから「HDX Readyシンクライアント」が登場していることに言及。「各社からのデバイスの登場により、性能はこれまで通りでありながら、価格が半分になる。デスクトップ仮想化に向けた全体コストが最適化されるようになる」と語った。また、Synergyの開催期間中、ヒューレット・パッカードがHDXに最適化したオールインワンゼロクライアントを発表したことにも言及した。
XenClientに関しては、新たに「Citrix XenClient Enterprise Edition」を発表。Enterprise Editionは、Virtual Computer社が投入していた製品と技術をXenClientに統合することにより実現したもので、管理性能が強化されている。「バックアップやリカバリの自動化などを実現できるほか、ハイパーバイザを選ばずに拡張性の高いエンタープライズ同期が可能になる」(竹内氏)という。この製品は、次期XenClientの発表にあわせて提供する予定だという。
伊藤氏は、「これから注目されるのはモバイルエンタープライズ。この頭文字をとって『me@work』といった取り組みが重視されるようになる」などとした。
一方、クラウドサービスにおいては、「Build」「Bridge」「Deliver」「Transform」の4つの観点から新たな取り組みを紹介した。