11月半ばに掲載されたCNETの記事によると、第3四半期には下位事業者のスマートフォン販売台数が前四半期から23%増加、長期契約(ポストペイド)も含めたスマートフォン販売台数全体のうちの42%がプリペイド契約によるもの(前四半期には39%)だったという(データの出所は市場調査会社のNPD)。
この背景には、長引く景気低迷のなかで携帯料金をなるべく安く抑えたいという一部の消費者の選好がある。またiPhoneの旧型などを中心にこうした市場で、魅力的かつTCO(保有にかかる総額)を低く抑えられる端末の選択肢が増えていることも見逃せない。たとえば、スプリントがVirgin Mobileという別ブランドで提供するプリペイドサービスだと、iPhone 4Sの2年間のTCOが1200ドル程度で済むといった例も出ている(端末代金450ドルを前払い、その後24カ月間の支払いは月30ドル)。それに対して、2年契約のポストペイドだと月額料金が60〜80ドルくらいで、端末にかかる前払い金が99ドルだとしても2年間で1500〜2000ドルはする、とのこと。
また、9月末から10月初めにかけてWall Street Journal(WSJ)が3回に分けて掲載した特集記事では、家計が厳しさを増すなかで外食費や衣料費などを切り詰めてでも、スマートフォン利用にかかる出費を増やし続ける消費者の姿や、あるいは逆に携帯電話の契約を辞めた人々の話があり、それぞれとても興味深い内容だった。
これらの記事によると、米国の一世帯あたりの電話・通信サービスに対する出費は、2007年に年間1110ドルだった費用が2011年には1226ドルまで増加。これに伴って、携帯通信事業者が手にするデータ通信関連の売上は2007年の220億ドルから2011年には590億ドルに増加、また2017年までに500億ドル程度に伸びることが見込まれるという。一方、携帯電話を保有していない人の数は全米で約3000万人ほどで、このため成人の携帯電話保有率は約88%にとどまるというPew Researchのデータも紹介されている。
こうした流れを受けて、10月初めに発表されたT-モバイルのメトロPCS買収では、Tーモバイルがプリペイド市場の成長潜在力というか、同市場最大手のメトロPCSの魅力を強調した。
いじわるな見方をすると、ポストペイド市場でベライゾンやAT&Tと戦っていくには大きな差をつけられすぎたT-モバイルが「下流食い」に舵をきった、といえるかも知れない。また、こうした流れをさすがに無視できないのか、最近ではベライゾンやAT&Tもそれぞれ別ブランドでプリペイドサービスの提供に力を入れ始めたり、あるいはMVNO事業者への姿勢を変えてきているという話が出ていることも付け加えておく。
さて。そろそろソフトバンクの話に戻ろう。