楽天が顧客満足度を高めるための取り組みを強化している。
2012年3月にはグループ全体を対象として取引企業や楽天会員、従業員の満足度を高める「おもてなしプロジェクト」を発足させ、さまざまな施策の展開を開始した。会員向け施策としては、CS部門強化の一環として渉外室カスタマーサービスサポートチームを新設。ヘルプシステムの強化に務めるとともに、同システムのグローバル化と基幹システムへの統合を計画中だ。
カスタマーサービスサポートチームでリーダーを務める開沼広樹氏に、楽天における顧客満足度向上の取り組みを聞いた。
楽天会員7978万人をサポートするヘルプシステム
「おもてなしの心」を訴える開沼広樹氏
楽天は現在、ショッピングモールをはじめとしてトラベル、書籍販売、電子マネー、銀行、証券、プロスポーツなど約40の事業を展開し、会員数は7978万人に達している。「顧客満足の最大化」は、三木谷浩史社長が創業初期から掲げる「成功のコンセプト」のうちの1つであり、同社のビジネスの根幹とも言えるものだ。
開沼氏は、そのコンセプトをさらに強化するものが、おもてなしプロジェクトだと話す。
「おもてなしの心を持って、店舗向け、エンドユーザー向け、従業員向けにさまざまな視点から改善を行なっていくものです。楽天のCSというとあまり良いイメージを持たれていないかもしれません(笑)。プロジェクトを管掌する国重(惇史副社長)にも同じ考えがあったようで、全社的なCSの意識や取り組みを強化する目的で始まったプロジェクトです」(開沼氏)
カスタマーサービスサポートチームが行なっているのは、各サイト上でのヘルプおよびFAQシステムの開発、運用、サポートだ。同社のヘルプシステムは、2007年10月から「RightNow CX」(現Oracle RightNow CX Cloud Service)と呼ばれるクラウドサービスを利用している。楽天市場のサイト右上から入ることができる「楽天ヘルプページ」がそれで、楽天のサイトデザインを踏襲しながら、FAQのランキングやキーワード検索、カテゴリ検索などを提供する。
「サービスの大きな特徴は、ウェブ、電話、メール、チャットといった各チャネルに対応していること。また、キーワード検索の結果や閲覧履歴、滞留時間などを分析して、ユーザーの疑問に自動的に答えられるような仕組みがあることです。例えば、ユーザーがサイト内で“困っている”と判断されると、自動的にオペレーターとチャットできる画面がポップアップします。スマートフォン、PC、フィーチャーフォンごとにそれぞれ画面を切り替えて、モバイルでアクセスした場合は即時性が求められる回答を表示しておくといったことも可能です」(同氏)
チャットによる対応では、オペレーター1人で複数の顧客に対応したり、参照リンクを画面に貼り付けるといった対応ができるため、メールや電話以上に丁寧でスピーディな問題解決が可能になるという。このほか、ユーザーアンケート機能を利用したウィークポイントの把握や、アンケートに寄せられるVOC(顧客の声)の一元管理なども行っている。