男性社会に割って入るのよ!——Facebookのシェリル・サンドバーグCOOの著書は、優等生による上から目線のアドバイスのようにも受け取れ、女性からの反発を大いに買う。この論争のど真ん中に登場し、優しく、力強く助言したのは、アリアナ・ハフィントンであった。
今回はテクノロジー分野から外れた話題を一つ紹介。
Facebook最高執行責任者(COO)シェリル・サンドバーグの『リーン・イン(Lean In)』をめぐる騒動について、ハフィントン・ポスト創業者で、現在はAOLメディアの責任者を務めるアリアナ・ハフィントンが、実に気持ちのいい主張を書いている(註1)。
リーン・インの騒動というのは、米国で3月11日に出版されたサンドバーグの著書『Lean In』と、出版をきっかけにサンドバーグが始めた「Lean In Circle」という、ある種の自己啓発活動のキャンペーンをめぐる論争のことだ(註2)。
なぜこれが論争になったのか。
2月にNew York Times(NYT)でかなり懐疑的な見方を含む記事が出たり(註3)、「ラリー・ペイジやサーゲイ・ブリンがベビーシッターを買って出るような恵まれた境遇の人間はそうはいない」などと痛烈な皮肉のこもったコラム(註4)が載ったりしたから……という感じを受ける。
論争の中味については、筆者のような中年男が口出しするべき筋合いの話ではない。
と言うのも、TIMEに出ている書籍の抜粋に目を通した限りでは、そもそもサンドバーグの問題提起が『もっと前へ出ましょう』という「女性から他の女性への呼びかけ」と思えるからだ。
また論争の内容も、あえて誤解を恐れずにいえば、ちょっと空気の読めない優等生の女子が、上から目線でモノを言って、他の女子から反感を買っているようにも見える。
「『なんで私のようにできないの。もっと頑張りましょうよ』ってあなたは言うけれど、私たちはもともとそんなの望んでいない」
「あなたのように色んなものに恵まれていたら……頭も良くて、仕事もバリバリできて、運も良くて(それで大金持ちになれて)、しかもお子さんが二人に、どこに出しても恥ずかしくないような立派なご亭主(註5)までいて……そんな人の真似は到底できそうにないわ」
——というような声が聞こえてきそうだ。
TIMEの表紙を飾ったサンドバーグの写真には「成功者だからといって、彼女を嫌いにならないで」(Don't Hate Her Because She's Successful)という言葉が添えられた。このキャプションからも、どことなくそんなニュアンスが伝わってこないだろうか(註6)。
それ故、「野郎にはほとんどとりつく島もない」という話にも見える。そういうある種の「厄介さ」を察知してのことだろう、自分がいつも目にしているメディアでは、男性は一人も口出ししていないようだ。
面白いネタを見つけて紹介する売文業者としても、なぜ21世紀の今になってサンドバーグが「フェミニズムの復権」と評されるような動きに出ようとしているのか、その点が今ひとつよくわからず、そのせいで話の組み立てようもない。
問題提起のフレームワークが、今の時代になんで「女子ももっと頑張ろうよ」なのか。
実際にヒラリー・クリントンやIMF専務理事のクリスティーン・ラガルドのような、実に格好の良い、押し出しも立派な方がすでにいたり(註7)、あるいは亭主と子供を残してアフガニスタンに単身赴任する軍人のお母さんがいるような時代にあって、「男子vs女子」のようなモノの見方はあまりに20世紀的ではないか、と感じられもする。
いずれにしても、話のネタとしては最近また目立つようになってきた同性婚問題の方が、社会の変化を感じされる流れとしてよほど扱う張り合いもある(註8)。