国内の企業向けスマートデバイスアプリ市場とその開発ソフトウェア市場をIDC Japanが調査した。調査からは現在、ユーザー企業でスマートフォンやタブレット向けに業務アプリの提供計画があると回答したのは全体の4分の1にも満たないことが明らかになっている。
調査は、ユーザー企業へのアンケート調査とソフトウェアベンダーを中心とする開発者へのアンケート調査を実施。スマートフォンとタブレットで稼働する企業向けアプリの利用実態と同アプリの開発の実態を分析した。
スマートデバイス向けに業務アプリの提供計画があると回答したユーザー企業に、提供予定の業務アプリ分野を聞くと「営業支援や顧客関係管理」のほかに情報系の「メール/スケジュール管理」「ドキュメント/カタログ管理」「社内ソーシャルネットワーキング」「コラボレーション/カンファレンス」「ビジネスインテリジェンス/アナリティクス」に回答が集まる傾向が見られた。
この結果は、すでにモバイル対応の業務アプリが存在するかどうかがユーザー企業の具体的な計画に影響していると分析している。提供計画での稼働プラットフォームを聞くと、スマートフォンではAndroidがiOSを上回り、タブレットではiOSがAndroidを上回っている。これは、現在のモバイル端末の流通状況に影響を受けたものと説明している。
モバイルアプリの開発者に利用経験のある開発ツールを聞くと、ネイティブの開発ツール「Android SDK」「iOS SDK」「Xcode」の回答が圧倒的に多い結果となった。コンシューマー向けのネイティブアプリ開発が企業向けも含めたモバイルアプリ開発全体をリードしているためと分析。モバイルアプリ開発では、JavaScriptやPHP、Perl、Python、Rubyなどの技術に加え、ウェブ開発ツールも比較的利用されていることも判明している。
調査では、ユーザー調査と開発者調査の結果に加え、IDC Japanが保有するデータをもとに、ソフトウェアのユーザー(企業とコンシューマー)と稼働環境(モバイルと非モバイル)をパラメータとして、売り上げを推計、市場を予測している。
2012年の国内企業向けスマートデバイスアプリ市場の規模は、前年比44.7%増の100億6100万円、2017年には478億400万とし、2012~2017年の年平均成長率(CAGR)は36.6%と予測している。2012年の国内の企業向けスマートデバイスアプリ開発ソフトウェア市場の規模は前年比5.4%増の64億8100万円、2017年には99億7500万円とし、2012~2017年のCAGRは9.0%と予測している。同社の冨永裕子氏(ソフトウェア&セキュリティシニアマーケットアナリスト)が以下のようにコメントしている。
「企業向けスマートデバイスアプリ市場とその開発ソフトウェア市場を成長軌道に乗せるためには、モバイルアプリのプラットフォームベンダーとのアライアンスの推進、モバイルアプリと非モバイルアプリを包括する企業ないアーキテクチャモデルの提示、製品認知度の向上と技術で提供できる価値の訴求を考慮した市場アプローチが求められる」